「チャイコフスキーの5番を聴く」35 独墺系の指揮者たち8 カラヤンその4
・ ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1971年9月16〜19日 ダーレム キリスト教会 スタジオ録音 )

ベルリンフィルとの2回目のスタジオ録音。このとき4番から6番までの3曲を4日間で録音しています。EMIの当時流行のSQ4チャンネル録音。
この3曲の録音は1972年の日本レコードアカデミー賞を受賞しています。

ライヴのような熱気とオケの強靭な合奏力が相乗効果を上げた壮絶な演奏でした。
この時期のカラヤンは気力が最も充実していた時期で、オケとの間も理想的な状態だったと思います。

第一楽章序奏のクラリネットソロは暗い洞穴を覗くような重い響きで始まります。
柔らかな歩みのAllgro con animaは旧録音よりも速いテンポで進み、38小節からの羽毛のような弦楽器の柔らかな音も印象的。
エロティックなほどのレガートの合間には、大指揮者メンゲルベルクの演奏にしばし聞かれるポルタメントのような瞬間もありました。
168小節めのmolt piu tranquilloでテンポを落としていき、音楽はひたすら前へ前へと突き進みます。198小節のfffの直前には微妙なためがあり、続く木管群のソロの下に付ける弦はあくまでも柔らかな音。
428−440小節までのmolt piu tranquilloも良く歌い490小節からコーダへ向かって加速。豪奢な雰囲気はさながら凱旋行進曲のように堂々たる最後を迎えます。

第二楽章のホルンソロはゆったりとしたテンポでじっくり歌いまず。
30小節めで微妙に遅くなり、100小節からの大見えも納得。
108小節のTempo 1ではテンポは落ちるものの大げさではありません。
第三楽章のほのかに漂う冷たさにシュールでブラックな美しさが漂います。
145小節のオーボエソロから加速。

第四楽章は怒涛の音響の大洪水。
荘重な開始の後、主題が楽器を変えて繰り返されるにつれて音楽が大きくふくらんでいくのが圧巻。
ゴウゴウと唸るバスの響きも凄まじく、110小節から加速。
Molt vivaceからはティンパニの連打の炸裂が息詰まる興奮を盛り上げます。

まさに手に汗にぎる豪演で、各楽器の入りのタイミングも絶妙、ライヴのような即興的な変化にぴたりと付けていくベルリンフィルの合奏力も圧巻でした。
今回聴いたのは、後期三大交響曲をまとめた国内初出のボックスものLPです。
オリジナルはSQ4チャンネル盤。この頃のEMI録音に共通した傾向ですが、細部がぼやけ音に締りがなく、通常のステレオで聴くと音の定位に曖昧さが感じられました。

(2013.04.02)