「ホルスト・シュタイン(1928〜2008)」 N響の名誉指揮者としてお馴染みのホルスト・シュタインは、ドイツのウッパタール生まれ。ウッパタール市立歌劇場からキャリアを開始しワーグナーの聖地バイロイトでクナッパーツブッシュ、カイルベルト、カラヤンら名指揮者の元でアシスタント指揮者として経験を積んだ後にバイロイト音楽祭に何度も登場しスケールの大きなワーグナーを聞かせました。スイス・ロマンド管、バンベルク響の音楽監督を歴任。 シュタインはシベリウスを積極的に演奏しています。 N響の客演時にもシベリウスをしばし取り上げ、スイス・ロマンド管音楽監督時代に交響曲第2番と管弦楽曲数曲の録音が有ります。 今年になって1975年の交響曲第2番を含め、N響とのシベリウスのライヴ録音がまとまった形でCD化されました。 ・スイス・ロマンド管弦楽団 (1981年10月 ジュネーヴ ヴィクトリアホール スタジオ録音) 雄大にしてストーリ性を持った音楽がラテン的な涼やかさを漂わせながら展開していきます。豪快な迫力な中にも繊細に歌わせる部分もあり、きっちりまとまった良い演奏だと思います。 第一楽章からロマンティックなアプローチでオケが自然に歌います。76小節から緊張感を高め、118小節のオーボエソロからの展開部の激しさも印象的。240小節からは爽やかなクライマックスを築いていました。 第二楽章は59小節からのstringendo指示の手前からテンポを動かしていきます。 97小節のlungaのパウゼは長めとし、続く98小節のAndante sosutenutoは、さっぱり粘らずに緊張を高め、160小節からの嵐のような部分ではコントラバスを強調。 後半205小節からは弦楽器を大きく鳴らせてロマンティックにたっぷりと歌います。 第三楽章の弦の余韻と130小節のオーボエソロ前の4分音符のさりげない収め方と響かせ方はさすがですが、スイス・ロマンドのオケは機動力に限界があり、中間部の低音弦楽器の速いパッセージは十分に音になっておらず、混沌とした雰囲気になってしまいました。 289小節で弦楽器よりも一瞬早く管楽器の和音が入っていました。いわゆる縦の線をきっちり合わせるのは苦手なようです。 第四楽章は美しく響かせながらゆったり静かに入る弦楽器。さらに低音弦楽器群をよく歌わせていました。179小節ではチューバを突然強調。 冒頭回帰部分はのびやかにして感動的に進行。258小節でのフォルテからは徐々にデクレシェンド。 終盤へ向かって長い坂を上り始める262小節からのa tempo ma tranquillo は速めであっさりのテンポとし、息の長いクレシェンドでじわりじわりと上昇を続けます。 チユーバの重い石のような音が終盤のコラールでガツンとした威力を発揮していました。 ラテン系の明るいオケの響きと空間を散乱する明るい木管楽器の音は、この曲がシベリウスのイタリア旅行中に着想されたことを思い浮かばせます。北欧の冬の厳しさよりも春が訪れた喜びを謳歌するような音楽運び。 フィナーレ最後のオケの鳴らし方などは、さすがにワーグナーを得意としたシュタイン面目躍如たる迫力でした。オケの機動力は十分とは言えませんが、シュタインの堅実な指揮で聴き応えのある演奏となりました。 今回聴いたのは国内盤のCDです。音としては年代相応の録音です。 (2011.11.25) |