「ユージン・オーマンディ(1899 - 1985)」 オーマンディは、フィラデルフィア管の音楽監督就任直後にこの交響曲第2番を演奏会で取り上げています。交響曲録音は、3番,6番を除く5曲の録音がそれぞれ複数あり、交響詩の録音も数多く残っています。 1955年、ヘルシンキの音楽祭に招かれていたオーマンディとフィラデルフィア管の団員たちは、アイノラの別荘に隠遁生活を送っていたシベリウスに会いに行きました。 外に出るのを渋る隠棲中のシベリウスをオーマンディが説得している間、110名の楽員たちは雨の降る中、外でシベリウスをじっと待ち続けたそうです。 ようやく説得に応じ、コートを着て外に出たシベリウスを楽員たちは歓声とともに迎えました。 その時の写真がRCAから出ているCDのジャケット写真になっています。 http://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/21400595.html 第2番には3つのスタジオ録音があります。 ・1947年 フィラデルフィア管 ・1957年 フィラデルフィア管 ・1972年 フィラデルフィア管 ・ フィラデルフィア管弦楽団 (1957年3月17日 フィラデルフィア スタジオ録音 ) オーマンディとフィラデルフィア管の煌びやかでゴ−ジャスな芸風は、曲によっては軽薄さ感じさせるようなきわどいところもあるのですが、この演奏は華やかさを抑え楽譜に忠実の姿勢に徹した演奏でした。 おそらく1955年のシベリウス訪問の際の楽団員の多くは、この録音時に現役であったはずです。オーマンディとオーケストラの純粋で私心のない作曲者への敬意がそのまま音になったかのような演奏でした。この曲のスタンダードとも言える名演。 第一楽章の弦楽器の刻みからしてメロウで明るい響き。ダイナミックレンジも広く強弱のコントロールも見事。 冷静な音楽運びには冷たさも感じますが、スコア片手に聴くと譜面にいじらしいまで正確であるのが判ります。 最後の10小節で、各楽器のバランスの均衡を保ちながらのディミヌエンドのコントロールなど凄いもの。 第二楽章最初の淡々と進めるコントラバスの歩みからpoco a poco strigendでのテンポ変化が絶妙。続くpoco allegroは遅めとし、93小節のクレシェンドのfffzの鮮やかな切り口も見事なもの。Andante sosutenuto前は柔らかに歌い216小節から加速。 第三楽章冒頭のチェロとコントラバスの一糸乱れぬアンサンブルには驚愕。オーボエソロから始まるレント部分の中間部は速いテンポの中に音楽が深く内省的に沈潜していきます。 プレスト部分の楽器が低音部から重層になって積み上げていく完璧なバランスも聴きもの。 第3楽章後半から第4楽章へのブリッジのコントロールも良く、フィナーレは落ちついた歩みの中でじっくり聴かせます。 トランペット、トロンボーンの軽い響きの中でストリングスの高音域が美しく響きます。 127小節のmeno moderatoからゆっくり加速していき冒頭で回帰するまで至る道のりが感動的。 162小節め、183小節めと段階的にテンポアップさせ、緊張感を持続させたままで262小節まで加速し大きなカーヴを描いてクライマックスを構築していきます。ここで下を支えるチェロの刻みも実に雄弁。 ブラスによる輝かしいコラールが始めまる4小節前ではコントラバスに3拍めのアクセントを強調。364小節と最後の小節にティンパニのクレシェンド付加。 私とこの録音との付き合いは長く、初めてこの演奏を聴いた時は高校生で、それまで馴染んでいたコリンズの渋く引き締まった演奏に比べ、オーケストラのゴージャスな響きにあまりにも表面的な演奏と感じました。 その後、実際にこの曲を演奏したりいろいろな録音を聴いた上で久しぶりに聴き直してみると、オーマンディの演奏の音符の一つ一つに込められた深い意味が次第に解りかけてきました。今、あらためてこの演奏の大きさに感動しております。 今回聴いたのは、LP参入間もない頃のCBSソニーが発売したダブルシリーズのLPです。http://boukyaku.asablo.jp/blog/2010/01/31/4849600 低音域をカットしない余裕のカッティングで、非常に底力のある優れた再生音でした。 (2011.12.23) |