・ フィラデルフィア管弦楽団 (1972年4月26日 フィラデルフィア、スコティッシュ・ライト・カテドラル スタジオ録音 ) オーマンディ3度目にして最後のスタジオ録音。 基本的な解釈と楽譜への忠実度は旧盤と変わりませんが、ダイナミックレンジはより大きく、音楽の豊かな広がりが余裕を感じさせます。 フィナーレのギアチェンジしながら加速する部分など、全く同じ個所で盛り上げていきます。 この演奏を初めて聴いた時は、派手なオケの響きに幻惑されて軽薄な演奏として感じたのが正直なところでした。 しかし今回聴き直してみると、煌びやかな音の中に聞かれるバランスとアンサンブルの精度の高さと、底知れぬオケのパワーに圧倒されました。やはり凄い演奏です。 曲への深い共感にも満ちていて旧盤以上の深さに感動しました。 第一楽章冒頭から恰幅の良い華やかな響き、140小め節から自然に加速していき、206小節でピアノまで音量を落としクレシェンドをかけながら大きく雄大なクライマックスを築きます。最後の12小節前のチェロの疾風の動きも印象に残ります。 第二楽章冒頭のチェロとコントラバスのピチカートはmp指定をmfで開始。 速めのテンポの中に深い余韻を持って進みます。70小節目からチェロの一部にコントバスを重ねているようです。 気合の入ったティンパニの強打が音楽をさらに引き締めていきます。 106小節のAndante sosutenutoは速めに流し、166小節からのブラスのフォルティシモ絡み合いでは壮絶な力の入りよう。 嵐の去った後は、苦悩から解放されたかのような弦楽器による平和への祈りで迫ります。 第三楽章は落ち着いたじっくりとした動き。後半へ向けてじわりと緊張を盛り上げフィナーレへのブリッジも壮麗。 ゆっくり着実な歩みの第四楽章は大海の中を悠々と泳ぐが如し。 162、183小節で段階的に加速していくのは旧盤と同じ。冒頭回帰部分ではコントラバスを強調しつつ弦楽器群が大きな広がりを持って聞かせます。 終盤は混沌から次第に実体が浮き上がっていく過程が素晴らしく、チューバが入る部分から大きく盛り上がり、最後のブラスのコラール前のコントラバスはあたかも巨人の歩み。 最後の全合奏での壮麗な響きをおそらく実演で聴いたならば圧倒的な感銘を受けたと思います。 今回聴いたのは、80年代にビクター音楽産業が出したLPです。CBSの旧録音とは録音会場の採り方も異なり、旧録音よりも暖色系の温もりを感じさせる音でした。 (2012.01.25) |