セルゲイ・クーセヴィツキー(1874〜1951)」 ロシア生まれ、9才から地元のオーケストラでヴァイオリンを弾き、その後世界的なコントラバス奏者としてヨーロッパを中心に活躍しました。その後ベルリンフィルの指揮者ニキシュの勧めで指揮者に転向。ロシア革命を逃れ、1920年から活動の本拠をパリに移しラヴェルやドビュッシー、オネゲルと親交を結びました。「展覧会の絵」のラヴェルのオーケストラ編曲版はこの頃の所産です。 1924年から、ボストン響の音楽監督となり、ストラヴィンスキー、バルトーク、ヒンデミットなどの作曲家たちに数多くの新作を委嘱しました。 クーゼヴィツキーはシベリウスともの親交が厚く、演奏会でも早い時期から取り上げています。第2番はボストン響を振った1935年と1951年の2種のスタジオ録音があります。 他にリハーサルを含む4種類のライヴ録音が存在し、1946年と1948年のライヴは入手可能です。 ・ ボストン交響楽団 (1935年1月24日 ボストン・シンフォニーホール スタジオ録音) 野生的で豪快、聴いていて大自然の中に身を置いているような大きな広がりと風格が感じられる名演でした。当時のボストン響は非常に優秀で、演奏の完成度は1930年録音のカヤヌス盤に比べるとはるかに上です。 第一楽章のテンポはカヤヌスの演奏を聴いた後では非常に遅く感じました。冒頭はカヤヌスのほぼ倍のテンポで始まります。通常大きく動く40小節から50小節の間でもテンポは動かず。カヤヌス盤で大きく乱れていた140小節から150小節の弦楽器の動きは非常に精密。古い録音でよく聞き取れませんが、一部で管楽器を重ねているようです。終盤の201小節の風雲急を告げる大爆発は凄まじい盛り上がり。 第二楽章は、カヤヌス同様の速いテンポでチェロのピチカートが早足で駆け抜け、133小節のアレグロからわずかに加速。中間部も粘らずあっさり。 ボストン響のアンサンブルは、第三楽章の速いパッセージも完璧。 加速をかけつつそのまま突入する第四楽章は力強く雄大な歩みで進行し、トロンボーンのタタタタァーンの合いの手は、3拍目めの四分音符指示を再現部と同じく全音符に改変。トランペットはスタカート気味に短く切ります。240小節のテヌートは短めで261小節のアラルガンドも無視。 音楽はよどみなく流れ、アンサンブルをピシリと引き締めながら終盤のクライマックスに向け登りつめる道程は実にスリリング。 金管群の雄大なコラールの入る前のティンパニにアクセント付加し音型も大きく改変。 この改変は後の指揮者にも大きな影響を与えています。 343小節の3番トロンボーンのベースと重なるラインにチューバを重ねていました。続く金管群のコラールの輝かしさと壮大さは比類のないもので、古い録音にも関わらず聴き手に大きな感動を与えます。 最後の370.371の二小節の和音は一つ一つ大きく区切りながら終結。 この曲は描写音楽ではありませんが、深い森の中を散策するような静かな落ち着きと大自然の壮大さを随所に感じさせます。クーセヴィツキーのシベリウスに寄せる大きな共感が見事に音化された感動的な演奏でした。 シベリウスから高い評価を受けていたクーセヴィツキーですが、シベリウスの盟友カヤヌスの解釈とは大きく異なります。 シベリウスの中では、自分の作品に対する解釈の許容範囲はかなり広かったようです。 今回聴いたのは、Perlから出ていたSP期のクーセヴィツキーのシベリウス録音を集めたセット物。1935年録音としてはバランスも良く、響きも豊かな聞きやすい音でした。 (2009.03.31) |