「エルネスト・アンセルメ(1883〜1969」 ドビュッシー、ラヴェル、ストラヴィンスキーと親交を持ち、バッハからバルトークに至る膨大な録音を残したスイスの名指揮者エルネスト・アンセルメ。 アンセルメのシベリウスの交響曲録音には第2番のほか、第4番の録音があります。 ・スイスロマンド管弦楽団 (1963年 ジュネーヴ ヴィクトリアホール スタジオ録音) よく歌い、理知的で明晰な演奏でした。オケの響きは明るいパステル画風で、ファゴット鼻をつまんだような響きなど全く独特です。 軽く明るい音で美しく流れる第一楽章では、中間部の229小節250小節にかけてブラスを咆哮させながらドラマティックに盛り上がり、終結部316小節の4拍めのコントラバスを強調して深い表現を獲得。 第二楽章では重い表現を目指しているようですが、軽い響きのため中途半端に終わっています。聴かせどころAndante sostenutoも甘くなりすぎ。 Andante con moto ed energicoの前210小節から劇的に大きく盛り上がります。最後の3小節前のティンパニの16分音符の強打はうまく決まっていました。 第三楽章でオケの限界が見えてしまいました。テンポは遅い部類ですが、合奏全体に崩れが感じられます。中間部のオーボエソロ導入前のピアニシモ指定のティンパニは大きい音。 210小節の弦楽器の上昇音からテンポを早め、フィナーレへの道のりでは効果的に盛り上げます。 第四楽章はほど良いテンポで進行。木管ののばした音がオルガンのように透明に響くのが効果的。トランクイロ部分では和音が解決したときの響きも美しく、細部はあくまで明快に鳴り響きます。少しずつ加速し最後の大きなクライマックスは今までのマイナスを吹き飛ばすほどの盛り上がりでした。 スイスロマンド管の性能は、パレーのデトロイト響、モントゥーのロンドン響に比べると大きく聴き劣りはしますが、端正で明快、純音楽的なアンセルメのアプローチには好感が持てました。 今回聴いたのは国内盤のCDで、この演奏の初CD化でした。 ヴィクトリアホールの豊かな残響は感じ取れますが、全体に紗がかかったような曖昧模糊とした音。 (2009.11.06) |