「シベリウスの2番を聴く」39・・・ジョージ・セル
「ジョージ・セル(1897〜1970)」

ブタペスト生まれ、3才でウィーンに移り、11才でウィーン交響楽団とピアニストとして競演、16歳で指揮デビュー。翌年ベルリンフィルを指揮しベルリン国立歌劇場の練習指揮者。ストラスブルグ(ストラスブール)、プラハ・ドイツ、ダルムシュタット、デユッセルドルフの各歌劇場の後、ベルリン国立歌劇場の第1指揮者となりました。オーストラリアへ客演中に第2次世界大戦が勃発し、アメリカに移住、1946年にクリーヴランド管弦楽団の常任指揮者となり、このオケを世界最高のオケに育てました。

セルのシベリウスの交響曲第2番は、以下の7種類の録音が有ります。

・ 1953/1/18       ニューヨークフィルハーモニック    ライヴ録音
・ 1964/11/25,26,28   コンセルトヘボウ管    ライヴ録音
・ 1964/11/28-30     コンセルトヘボウ管   スタジオ録音
・ 1966/10/15      クリーウ゛ランド管    ライヴ録音
・ 1967/03/17      クリーウ゛ランド管    ライヴ録音(トロント)
・ 1970/01/28      クリーウ゛ランド管    ライヴ録音
・ 1970/05/22      クリーウ゛ランド管    ライヴ録音(東京)


・ ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団
(1964年11月28〜30日 アムステルダム コンセルトヘボウ スタジオ録音)

フィリップスへのスタジオ録音。セルはコンセルトヘボウ管と密接な関係があり、いくつかの録音をのこしています。この演奏の数日前の客演時のライヴ録音もあります。

速いテンポでスッキリ進めオケを壮大に鳴らし切った演奏。クリーヴランド管との録音に比べ、響きがウォームで肩の力が抜けたリラックスさが感じられますが、根底に流れるのはセル特有のクールな叙情。

第一楽章冒頭から速いテンポできびきびと進め、弦楽器の刻みも非常に正確。209小節からブラスを思い切り咆哮させて息詰まる興奮を盛り上げます。259小節で大きなルバートを効かせるのが特徴的。

コンセルトボウ管は相変わらずの高性能で、第二楽章のコントラバスのピチカートは完全に一本に聞こえます。68小節から大きな動きを見せ。Andante sosutenutoの優しい表情と美しい余韻も印象的。トランペットソロにかぶるフルートソロの深く太い音は、まるで2本で吹いているかのような音でした。176小節のティンパニの一撃は強烈。最終部分の199小節からは大きく強い意志を感じさせるように歌い上げます。

第三楽章もスケール大きく、フルートの太い音は名手バルワーザーでしょうか。テンポプリモの160小節裏拍の木管楽器にはホルンを重ねていました。中間部の平和の気配と両端部分の大きな対比も見事。

第四楽章も豪快で大きな世界が展開。ティンパニのトレモロの一拍めを押し付けるような強調。このティンパニに一部加筆があるようです。56小節のun poco piumotoの手前でテンポを大きく落とし、237小節のpesanteの重々しさからのびやかに拡大していきます。終結部の335小節で大きくルバートをかけながらテンポを落としていき、壮大なブラスのコラールを導きます。
最後の3つの和音は管楽器を短めに演奏させ、弦楽器の余韻だけを残していました。

この演奏は高校以来の長いつきあいでして、初めて聴いた時は、煌びやかな迫力に圧倒されたのですが、久しぶり聞いてみると、楽器を重ねて豊かな響きを引き出したりテンポを大きく動かしたりと、クリーヴランド管との演奏とは異なるセルのロマンティストとしての一面が出ているのに気がつきました。

今回最初に聴いたのは、聴き慣れた日本フォノグラムのグロリアシリーズの廉価盤LPと、ユニバーサルから発売されている紙ジャケ仕様の国内盤CDです。いずれも良い音でコンセルトヘボウ管の豊かな音が楽しめました。

(2009.11.23)