「シベリウスの2番を聴く」41・・・ジョージ・セル その3
・ クリーブランド管弦楽団
(1970年5月22日 東京  ライヴ録音)
セル唯一の来日公演となった1970年の東京ライヴ。
まろやかな響きの中に歌心と厳しさが完璧なバランスで響き渡った名演です。

自然な流れの中で空中を漂う自然で暖かな響きの第一楽章冒頭。テンポを大きく動かしながらも不自然さを感じさせない音楽の流れ。200小節から巨大な音楽がむくむくと湧き上がり大きなクライマックスを迎えます。終結部のディミヌエンドの減速と音量変化と最終小節の4分休符の扱いも絶妙。

第二楽章冒頭ティンパニは大きく鳴らし、速めのテンポで進むコントラバスとチェロのピチカートは完全に一本に聞こえます。57小節のオーボエはメゾフォルテ指定をピアノでそっと優しく入り、68小節のpoco Allegroでは、チェロのテンポをぐっと落としながら強調。
101小節のAndante sosutenutoからの自由に遊ぶテンポの揺れも心地良く、トランペットソロを支える弦楽器がピアニシモながら雄弁に自己主張。
186小節のコントラバスの上昇ピチカートからヴァイオリンの旋律への引渡しのテンポの揺れの間の取り方などすごいもの。
203小節から加速。207小節で一旦タメて208小節から大きく飛翔。最後の小節のトランペットのデクレシェンドはなし。

しなやかにして響きが深い第三楽章は、弦楽器群の受け渡しも鮮やか。
261小節のホルンに強いアクセント付加。ティンパニのメゾピアノ指定もスフォルツアートとし、フィナーレへのブリッジ部分ではホルンのシンコペーションに強烈なアクセント付加。

フィナーレは奥行きのある透明な響きの中で、終盤まで高度な高みにまで昇華していきます。146小節から加速。冒頭回帰のトロンボーン三連譜のズバババンはすごい迫力です。
177小節のトロンボーンは、ff−ffをmp−mfとし、240小節からのテンポは大きく揺れますが、セルの棒にぴったりと付けるオケが見事。
終結部の盛り上がりは比類のないもので、チューバを強調したラストの盛り上がりは、とても落ち着いて聴いていられないほど感動的でした。

大指揮者セルが最後の輝きを聴かせた名演です。ライヴですがオケの完成度は望みうる最高水準。
解説によるとリハーサルなしの一発勝負の演奏会だったということです。恐るべし。

当初は海賊盤でしかこの演奏は聴けませんでしたが、数年後に続けて正規盤が出ました。
今回聴いたのは、FKRナンバーの海賊盤のCD−R、クリーヴランド管自主制作CDとCBSからの正規盤の3種です。

海賊盤は、FMからのエアチェックでヒスノイズも大きく、音の状態が良い正規盤が出た今は存在感を失いました。
(2010.01.23)