「ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989)」 カラヤンのシベリウスには、第3番を除く6曲の録音があり、第2番は2種のスタジオ録音が残されました。 ・1960年 フィルハーモニア管 スタジオ録音 ・1980年 ベルリンフィル スタジオ録音 ・ フィルハーモニア管弦楽団 (1960年3月28、29日 ロンドン キングズウェイホール スタジオ録音) 1951年に、カラヤンの第5番から始まったフィルハーモニア管によるEMIのシベリウス交響曲全集録音プロジェクトはカラヤンの指揮で4、5、6、7番、残った第1番から第3番までの3曲はパウル・クレツキにバトンタッチされ、1955年中に全7曲の録音が完結しています。(クレツキの第2番のみステレオ録音) 後に第2番と第5番の2曲は、カラヤンの指揮でステレオにより再録音されました。 この時点の1960年9月でカラヤンとフィルハーモニア管との録音契約は終了し、以後カラヤンがフィルハーモニア管を指揮することはありませんでした。 この演奏は、遅めのテンポで丁寧雄大に仕上げた演奏ですが、過度のロマンティックさが異質なワーグナー風の音楽と化しています。 特徴的なレガート過多の旋律の歌わせ方が第2楽章では成功しているとはいえ、フィナーレでは間延びしたものになってしまいました。 第一楽章210小節のクライマックスからの、息の長い大きなうねりなどさすがに聞かせます。終盤の315小節からのぐっと力を溜めてからの終結もお見事 細かく聴かせる第二楽章は比較的早めのテンポ。 コントラバスのピチカートの上のファゴットソロの間のティンパニのクレシェンド、デクレシェンドの波の正確さには感心させられました。 ブラスの咆哮からしだいに減衰していきpppまでに至るAndante sostenuto前のフェルマータは短く、同じような繰り返しの179小節も同じ。ここまでのpppへの移行は実にうまいものです。 186小節のエスプレッシーヴォに掛かる第1ヴァイオリンの歌に合わせるチェロのピチカートも実に雄弁。 第三楽章から第四楽章までのブリッジでの壮麗な演出は見事なものですが、録音に鮮明さを欠きホルンのシンコペーションなどノイズに埋もれ全く聞こえないのが惜しいと思いました。 自然な流れで第四楽章に突入するものの、遅いテンポでのテヌート多用の歌わせ方は時として重く感じます。 209小節目のクレシェンド強調のように時々音楽の流れに意外な変化を持たせて、このゆっくりとしたテンポで最後まで緊張感を持続させていました。 フィルハーモニア管のしなやかなアンサンブルと幾分軽く明るい響き、随所で活躍するブリティッシュブラスのメロウな響きは好ましいものですが、シベリウスの演奏としては豪華すぎて、終始違和感が離れませんでした。 録音も鈍く、ティンパニのアクセントなど不明瞭で終盤のクライマックスは不発に終わっています。 今回聴いたのは、日本コロンビアが出したステレオ初出LP、OS3022(マトリックスNo.はYAX573−6,YAX574−4)と、70年代と80年代に東芝EMIが出したLPのEAC40019(YAX573,YAX574)、EAC55016(YAX573、ZYJ1059)の3種を聴きました。 EAC55016はB面の最後に「フィンランディア」が収録されていますが、なぜかジャケットにもレーベルにも「フィンランディア」の標記がないのが不思議。 音は日本コロンビアが一番明快。 東芝盤は2種とも細部が明確でなく、特にティンパニの音がぼやけていて、これはフィナーレのクライマックスでは大きなマイナスです。 東芝盤の2枚のA面は同じマトリックス番号ですが、EAC40019は高音にバランスが偏り、EAC55016はかなり音がざらつき聴き苦しくなっています。 イギリスから日本に送られた最初のマスターテープの劣化が急速に進んでいるようです。 (2011.07.13) |