「シベリウスの2番を聴く」49・・・・独墺系の指揮者たち カラヤン その2
カラヤンの演奏会記録を見ると、シベリウスの交響曲を取り上げた時期は60年代に集中しています。

70年代はほとんど5番のみで第4番は3回ほど、晩年の80年代はシベリウスの交響曲は演奏会で一度も取り上げていませんでした。

演奏回数では交響曲第5番が圧倒的に多く17回。次に第4番の5回、第6番と第7番は各2回、第1番は1942年のベルリン国立歌劇場管との1回のみ、第2番と第3番に至っては演奏会で一度も演奏していません。

・ ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
(1980年11月 ベルリン、フィルハーモニー スタジオ録音)

デジタル録音初期のEMIへの録音。交響曲第6番とほぼ同時進行での録音で翌年1月には第1番を録音しています。

カラヤンのベルリンフィルとのシベリウスの交響曲録音は、60年代半ばドイツグラモフォンへ第4番から第7番までの録音があり、76年には第4番と第5番のEMIへの録音があります。

この演奏は、ベルリンフィルの威力を過剰なまでに前面に押し出したダイナミックレンジの大きな演奏でした。旧録音以上に豪華絢爛なシベリウス。

デジタル録音実用と同時にカラヤンがこの第2番を取り上げたのもわかるような気がしますが、音響のお遊びに耽溺しているようなきらいもあり、作品への共感は感じられませんでした。

なお、第四楽章最後のコラールの367小節からの巨大なフォルティシモの中で、1番トロンボーンの音が微妙に濁って聞こえます。演奏者の音程が不安定というのではなく、楽器としての実体を伴わない音が揺れている機械的な歪のような音です。
マスターテープへのトラックダウン時の編集時、あるいはリマスタ時に倍音成分がおかしなことになったのではないでしょうか。

第一楽章39小節のメゾフォルテ指示をフォルテとしているのは新全集版と同じ。シベリウスが書き込んだmf>pp<mpなどの音量の変化を実に忠実に音化しています。
ベルリンフィルの金管群は時として高圧的に響き、235小節からのクライマックスは凄まじいものでした。再現部260小節のホルンとチューバのバランスは絶妙。

第二楽章もブラスのフォルティシモは巨大なピラミッドと化していました。ティンパニの轟音。98小節のAndante sosutenutoの厳しいまでの音。
167小節のピウ・・・のブラスが咆哮するffからfffに変化する部分ではティンパニが一瞬早く先導するのはカラヤンの指示でしょうか?
187小節からの普通纏綿と歌う部分は意外とあっさりです。最後はオルガンのような響きで終結。

第三楽章はオドロオドロしい遅さです。オーボエソロは控えめ、地の底から湧きだす低音弦。オーボエソロのメゾフォルテ部分でフルートのピアニシモのの区別がはっきり聞こえていました。

第四楽章は旧録音同様遅いテンポ。
なぜか急にティンパニが控えめのバランスになってしまいました。音楽がだぶつきながら停滞。響きのあまりのゴージャスさには違和感があります。261小節のAllargandoから続く262小節のa tempoから大きな坂を上ります。ここでトランペットのソロがかなり突出しているのが気になりました。

フォルティシモの威圧的な響きと消え入るようなピアニシモの大きな対比と重厚さは、後期ドイツロマン派の流れの延長上からのアプローチのように思えます。

今回聴いたのはデジタル録音初期の国内盤CDです。低音から高音まで平均的なのっぺりした音でした。
第四楽章最後のトロンボーンの音は極端な例ですが、80年代初頭のEMIのデジタル録音は人工的な細工が気になります。

(2011.08.16)