「ラインを聴く」18・・・フランス系の指揮者たち2 パレー
ポール・パレー(1886〜1979)
フランスのルーアン近郊に生まれる。パリ音楽院で作曲を学び、ローマ大賞一等賞を得ています。第一次世界大戦従軍後は指揮者に転じ、1923年ラムルー管弦楽団首席指揮者、1932年コロンヌ管弦楽団首席指揮者。
第二次世界大戦中はモンテカルロに居をかまえ、対独レジスタンスにも協力。1952年からデトロイト交響楽団の音楽監督となり、全米屈指のオーケストラに育てています。
1962年には音楽監督辞任し以後フリーで活躍。

パレーはフランスの指揮者とはいえ、フランス物のみならずシューマンやブラームスなどの独墺系の作品にも名演を残しています。

パレーの「ライン」には3種の録音があります。

・デトロイト響     1959年   スタジオ録音
・イスラエルフィル   1971年   ライヴ録音
・フランス国立放送響  1975年   ライヴ録音

・ デトロイト交響楽団(1959年1月 デトロイト  フォード・オーディトリアム    スタジオ録音)
米マーキュリーへの交響曲全集録音。重量感があり澱みなく流れる音の奔流、一点の曇りのない爽やかにして豪快な名演でした。

第一楽章冒頭から厚い響きで始まります。音楽が流れながら55小節からの全体がクレシェンドをかける部分で、ファーストヴァイオリンを他のパートよりも早めにクレシェンドをかけて前進感を演出。62小節目のホルンはマーラー版のアイディアを採用し、一小節後にずらせていました。137小節で一瞬のフォルテ。205小節かのカノン風の箇所で各声部の絡み合いの確かさ。210小節あたりからバスを強調。

滑らかに流れていく部分で、時としてチェロとコントラバスの8分音符のガガガガガという強調が曲の印象全体の大きなアクセントとなっています。
312小節のファゴットにホルンを重ねるような部分はありますが、加筆は最小限。
367小節のホルンも雄大。
427小節でファーストヴァイオリンのみを残した他の楽器が細かく刻んだ伴奏系になる部分で、突然エアポケットに落ち込んだような響きが薄くなる部分もありますが、これはシューマンの責任。445小節で音楽の気分が急に明るい気分からブルーに変化する箇所でバス強調など驚きのマジックであります。

第二楽章は早めのテンポでよどみなく空中を漂う軽い音。後半力強い一面も見せ、第三楽章では清楚で可憐な表情の中に、柔らかで穏やかにしてドイツロマン派の爛熟の気配も漂います。ピアニシモの羽毛のような響き。

第四楽章最初の音のザン!とした短く鋭い音で第3楽章までの平和な気分が破られます。人間の内面を抉るような深い音楽。深く宗教的な雰囲気が漂います。
2分の3拍子に変わった部分からのチェロの8分音符のアクセントは怒りの表情。
音楽は次第に大きな悲しみから壮大なクライマックスへ向かいます。

第五楽章フィナーレは再び明るい歓喜の音楽。最初素っ気ないほどの薄い開始ですが、小気味よい軽快なリズム、各声部が有機的に絡み合いながら明確に鳴らしていく小粋でスマートな表情のカッコヨサ。
255小節のファンファーレ前でもテンポは落さず、271小節で管楽器がカノン風に絡む部分でのチェロの細かな動きが実に正確でした。後半のスピード感も見事で310小節から加速。

オケもパレーの棒に良く反応していました。充実した響きと若さと勢いに満ちた推進力で、非常に聴きごたえのある名演でした。

今回聴いたのは、米マーキュリーのCDです。
発売当時から優秀録音として有名でしたが今でも色褪せない十分現役の音。

(2011.09.11)