「ラインを聴く」19・・・フランス系の指揮者たち2 パレーその2
・フランス国立放送局管弦楽団(1975年    ライヴ録音)

御年89歳のパレー翁のライヴ。
私は、ちょうどこの頃のパレーの指揮姿をテレビで見たことがあります。
国連かユネスコの関係する演奏会で、オケはモンテカルロのオケ。
曲はファリァの「火祭りの踊り」とアランフェス協奏曲だったような気がします。
長身痩躯の枯れ木のような老人が両肘を直角に曲げ、幾分前かがみになりながら手を上下に動かすだけの指揮姿が妙に印象に残っています。

このライヴではスタジオ録音とはだいぶ解釈が変わりましたが、正直なところ衰えが痛々しい部分があります。

第一楽章はかなり耄碌しているような息絶え絶えの遅いテンポで始まりますが、曲が進むにつれて演奏に血が通い始め生き生きとしていくのには驚き。しかし歌わせることに集中しすぎて音楽は停滞気味です。
旋律線が8分音符の刻みで動く部分を非常に強調していました。
スタジオ録音で実施していた62小節めのマーラー版と同じホルンの改変はなし。

第二楽章では不思議な色気が漂いはじめ音楽に精気が蘇ります。95小節のホルンのアクセント部分の直後でffをpに改変。
第三楽章も若々しくも華のある音楽、だいぶ蘇生してきました。
第四楽章は巨大で深い音楽ですが金管群の不調が気になります。冒頭部分のトロンボーンなどヨレヨレです。これはパレーの棒が曖昧だったのかもしれません。

第五楽章は確固たるゴツゴツした音楽。150小節からの歓喜の爆発は見事です。ファンファーレの手前でテンポを大きく落していました。

さすがに老いは隠せず、曲の最初は枯れ果ててテンポが定まらない様子ですが、曲が進むにつれて徐々に音楽に精気が漲るのが立派です。
第二、三楽章の華のある表情などパレーの面目躍如たるもの。

手持ちは現在活動を停止してしまったアメリカのDisco Archivaが出していた裏青のCD―ROMです。おそらく個人経営のレーベルで解説書もケースもなし。CD−ROMの表面にマジックインキで製造番号が書いてあるだけの怪しげなものです。

音はモノラル、AMラジオのエアチェックをそのままCDにしたような音で、75年の音としてはかなりオソマツでした。
(2011.10.04)