・ イスラエルフィルハーモニー管弦楽団(1971年11月29日 テルアヴィブ マン・オーディトリアム ライヴ録音) イスラエルでのライヴ。一歩一歩着実な歩みで聴かせるじっくり型の演奏。スタジオ録音とはだいぶ変わりましたが、1975年録音ほどの衰えは感じません。 第一楽章は冒頭からゆっくり開始。62小節のマーラーによる改変はここでもなし。 力強く遅いテンポですが、幾分単調なために音楽の流れは弛緩しています。 214小節からのイスラエルフィルの弦楽器がさすがに美しい響きでした。 274小節でテンポをいくぶん落します。367小節のホルンの入りは雄大。 460小節の美しい弦楽器のふくらみが印象的。最後の小節のティンパニのトレモロは落ちてしまったようです。 第一楽章からのインターバルなしで第二楽章にすぐに入ります。 颯爽とした速いテンポ、旋律の横で動き回る細かな動きの変転は見事なもの。 強弱の差は大きくなく静かな海でゆったり舟を漕ぐような三拍子。 第三楽章も優しく美しく慈しむようなで、早いテンポで停滞は感じられません。 第四楽章の内声部の生かし方はさすがに見事、音楽に清潔感が漂い、天へ果てしなくゆっくり登っていくような宗教的で昇華された音楽が響きます。 第五楽章は悟りの境地に至ったような自然体。ゆっくり散策しているような遅めのテンポでした。 大きな盛り上がりはありませんが、昔話を古老からきくような深い味わいのある演奏でした。 なおクレツキのスタジオ録音で気になった、イスラエルフィルの弦楽器と管楽器の技量のギャップは解消されています。 今回聴いたのは、イスラエルフィルの自主製作レーベル、ヘリコンから出ているCDです。 標記はモノラルですが、時々音が左右に揺れていてステレオになりそこねたモノラル。 といった趣。 なおカップリングされているシューマンの交響曲第2番は非常な名演で、私が今まで聴いた同曲の演奏では疑いなくベストです。 (2011.10.19) |