「アンドレ・クリュイタンス(1905 - 1967)」 ・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 (1957年2月2,4,5日 ベルリン グリューネワルド教会 スタジオ録音) ベルリンフィルとのベートーヴェン交響曲全集録音進行中の演奏、モノラルの第7番とほぼ同時期の録音です。 小細工なしのストレート、音の余韻と遠近感の良く出た演奏でした。 冷静にしてテンポの動きが少なく、まとめにくいシューマンの管弦楽曲をわかりやすく端正に整理整頓しています。ただし音の状態が万全でなく、十分に演奏の真価が判らないのが難点。 第7番の録音ではベルリンフィルの重厚な響きが前面に出ていたのですが、この「ライン」では中性的な音で、オーケストラの個性はあまり感じられませんでした。 第一楽章から強弱のコントラストはさほどなく、音楽は生き生きと躍動する明朗なもの。122小節のディミヌエンドの直前でわずかにテンポと音量を落していました。 フォルテとアクセントも刺激的でないのがクリュイタンスらしいと言えます。 214小節から弦楽器と木管楽器の掛け合いから大きく世界が広がっていきます。 367小節のホルンは、あたかも遠くから近づいてくるようにピアノで開始ししだいにクレシェンド。533小節のffでも刺激的でない音が響きます。 第二楽章は遅めのテンポで楽器のバランスも良くシューベルトの小品を聴くような味わい。 中間部のブラスの穏やかな響きにはロマンの香りが漂います。 第三楽章は一転して速いテンポ。 旋律の繋ぎ目の間の取り方が非常にうまく、最後の部分などコマギレの旋律を絶妙な間で繋げていくのが見事。 第四楽章も各声部が明快で歌心も感じられます。最後の3小節の激しいアクセントには深い後悔の念を表しているかのように聞こえました。 第五楽章は華やかな中に優しく包み込むような温かさがありました。66小節あたりで一瞬音楽が停滞するのが意外な展開。 弦楽器が細かく刻みながら旋律線を演奏する部分でも輪郭がぼやけず、この刻みに木管楽器が明快に旋律を歌います。 終結部の息の長いクレシェンドで大きなクライマックスを築きます。299小節のホルンにはトランペットを重ねていました。 ベルリンフィルから淡い音色を引き出して微妙にぼかした音となっています。 同じ時期のベルリンフィルとのベートーヴェンの交響曲第7番(モノラルの第1回)録音と全く違った音なのに驚きました。 今回聴いたのは国内盤CDです。これはマスターテープの保存状態が良くないか、CD化の際のリマスタリングの影響かもしれません。オリジナルのLPで確かめてみたいものです。 (2011.11.13) |