| 「シューマンの交響曲」 作曲家シューマンは、ある時期に特定のジャンルの作品を集中して書いています。 作品１から１８３９年までの作品２３までの作品は全てピアノ曲。 いわゆる「ピアノの年」と言われているこの１０年間のうちに「謝肉祭」「子供の情景」「クライスレリアーナ」、「交響的練習曲」といったシューマンの主要なピアノ曲のほとんど全てが含まれています。 ところがクララと結婚した１８４０年を境に突然「歌曲の年」が始まります。 １８４０年の一年だけでも「リーダークライス」「女の愛と生涯」「詩人の恋」などの傑作が集中して書かれ、歌曲だけでも百数十曲というすさまじさです。 そして１８４１年は、交響曲第１番「春」、交響曲第４番の初稿、３楽章の交響曲とも呼べる「序曲、スケルツォとフィナーレ」、ピアノ協奏曲の初稿などの主要なオーケストラ曲が集中的に書かれています。 翌１８４２年はピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲などの「室内楽の年」 特定のジャンルにターゲットを絞り完成度を高め、しだいに規模の大きなジャンルに挑戦していったシューマンの潔癖にして生真面目な性格が感じられます。 １８４１年は「交響曲の年」とも呼ばれていますが、交響曲に限って言えば、シューマンは作曲を始めたごく初期から交響曲の作曲を試みています。 シューマンの交響曲は、番号つきの４つの交響曲のほかに、交響曲の形式から緩除楽章を省いたような「序曲、スケルツォとフィナーレ」（１８４１年）や、第２楽章までが完成され、第１楽章の初演までおこなわれた交響曲ト短調（１８３０年）、さらに着手したものの完成までに至らなかった曲を含めると１1曲を数えます。 以下は、シューマンの交響曲作曲の試みです。 １８２９年 ピアノ四重奏曲（未完）を交響曲ハ短調へ改作（未完） ベートーヴェンの交響曲を意識した模索 １８３０年 ハムレットスケッチと呼ばれるオーケストラ曲の作曲の試み。 交響曲ト短調（第１，２楽章までは完成 未完） １８３２年 交響曲ト短調 第一楽章初演 １８３３年 交響曲ト短調 第一楽章改訂稿初演 １８３７年 変ホ長調の交響曲へのプラン １８３９年１２月、シューベルトの交響曲第８番（第９番）「グレート」ハ長調を発見 「ライプツィヒ時代」 １８４０年 「歌曲の年」 歌曲１３３曲を作曲 ９月クララと結婚 １０月１３日 ハ短調の交響曲に着手（未完） １８４１年 １月２１日 別のハ短調の交響曲のスケッチ（未完） １月２３日 交響曲第１番変ロ長調「春」のスケッチにとりかかる ２月 交響曲第１番変ロ長調「春」完成 ３月３１日 交響曲第１番変ロ長調「春」 メンデルスゾーンの指揮で初演 ５月 「序曲、スケルツォとフィナーレ」作曲 ピアノと管弦楽のための幻想曲作曲 （後にピアノ協奏曲イ短調第一楽章に転用） ５月３０日 交響曲ニ短調（交響曲第４番の第１稿）作曲開始 ９月９日 交響曲ニ短調（交響曲第４番の第１稿）完成 ９月２１日 ハ短調交響曲作曲の試み（３曲めのハ短調交響曲） １２月 後の第４番、交響曲ニ短調初演 初演時のタイトルは「交響的幻想曲」 １８４２年 「室内楽の年」 １８４４年 ドレスデンに転居 ワーグナーと交友 １８４５年 ４月 ４日 交響曲第２番 ハ長調着手 ピアノ協奏曲イ短調 最終稿完成 １８４６年 １０月１９日 交響曲第２番 ハ長調完成 １１月 ５日 交響曲第２番 ハ長調 初演、メンデルスゾーンの指揮 １８４７年 ７月１４日 交響曲第２番ハ長調改訂 １８５０年 ９月 １日 デユッセルドルフ転居 市の音楽監督 １０月２４日 チェロ協奏曲完成 １１月 ２日 交響曲第３番「ライン」作曲開始 １２月１２日 交響曲第３番「ライン」 完成 １８５１年 ２月 ６日 交響曲第３番「ライン」初演 シューマンの指揮 １２月１日 ノルベルト・ブルグミュラー（ピアノ教則本で有名なヨハン・フランツ・ブルグミュラーの弟）の未完の交響曲ニ短調スケルツォのオーケストレーションをおこなう。 １２月１２日交響曲ニ短調の改作開始 １８５２年 この頃から宗教曲の作曲に没頭 １８５３年 ３月 ３日 交響曲第４番ニ短調（第２稿） 初演 １８５４年 ライン川に身を投げる。 １８５６年 シューマン死去 １８８９年 ブラームスの勧めにより交響曲第４番ニ短調（第１稿）を フリッツ・ヴェルナー（バッハ全集の校訂者）が校訂初演 （第１稿 ウエルナー版） （2011.03.29） |