「ラインを聴く」8・・・トスカニーニ
「アルトゥーロ・トスカニーニ(1867〜1957)」

ミラノ郊外パルマ生まれ、天才的な記憶力と統率力を持ちヴェルディの歌劇「オテロ」の初演にチェリストとして参加。指揮者としては歌劇「ラ・ボエーム」、「道化師」「トゥーランドット」など多くの歌劇や管弦楽作品の初演を振った音楽史上に残る大指揮者の一人。

トスカニーニの「ライン」は2種の録音が残っています。

・1938年   NBC響  
・1949年   NBC響  

・NBC交響楽団
(1949年11月12日 ニューヨーク  8Hスタジオ 放送用ライヴ録音)

マーラーの弟子であったワルター以上にマーラー版に忠実。
極めて情熱的で筋骨逞しいヘラクレスのような演奏です。ロマンティックな甘さを削ぎ落とした強烈なカンタービレが印象的。硬質な録音が近寄り難さを助長しています。

第一楽章冒頭から金管とティンパニはカット。(M)
55小節のティンパニが入りクレシェンドして初めてトランペットが主題を奏する部分はワルター以上の輝かしさ。(M)
184小節のファーストヴァイオリンの四分音符をカットしかもピアノとする(M)。
210小節の木管楽器の柔らかな響きが印象的です。
215小節からの長いクレシェンドの後から加速、この部分の緊張感は素晴らしいものです。
273−290小節では旋律にホルンを重ねています。これはワルターと同じ。
312小節のファゴットの旋律にホルンを重ねる。(M)
367小節のホルンは忠実にマーラー版に従ってゲシュトップの弱音で開始しています。(M)
ここのホルンのゲシュトップからファゴットに旋律が受け渡され、次第に音量を増す部分のコントロールが実に見事。
411−420小節の弦楽器の旋律にトランペットを重ね輝かしいカンタービレ。(M)
ただし435小節からの弦楽器の刻みの旋律線は強すぎるように思いました。

第二楽章は9小節めからオーボエをカットし、フルートのみのソロ(M)。
17小節めからの弦楽器はピチカート(M)。
25小節からの木管楽器の細かな動きはカット(M)。51小節ピチカート(M)
65小節の四分音符にアクセント気味の強調は野暮な雰囲気です。
74−75小節のホルンはカット(M)。
103のクレシェンドsf→pp(M)
最後の3小節の絶妙のテンポ変化が名人芸。

間奏曲のような第三楽章は、桜の花びらがハラハラと散るような潔さと儚さが漂います。
51小節の弦楽器をピチカート化(M)

第四楽章では2小節のピチカートのf(M)、
峻厳にして悲劇的な壁が通り過ぎていくような素晴らしい音楽が展開していきます。
53小節のファンファーレでは、トランペットを1番トロンボーンと同じ形としていました(M)。

第五楽章冒頭はテヌート気味のフォルテで開始。ここはマーラー版と異なります。
218小節から木管楽器を強調させ、271小節めからティンパニを追加し、大きなクライマックスを構築。
323小節でファーストヴァイオリンの上昇音にホルンを付加。

古風にして情熱的、厳しく彫琢された演奏でした。

マーラーのニューヨーク時代(1908〜1910年 メトロポリタン歌劇場の指揮者
1909〜1911年 ニューヨークフィルの指揮者)に、トスカニーニはメトロポリタン歌劇場の指揮者でした(1908〜1915年)。
トスカニーニはマーラーがニューヨークフィルを振った「ライン」の実演を聴いていたのかもしれません。

同じマーラー版を用いたワルターが文学的でブラームス寄りのアプローチだったのに比べ、トスカニーニの演奏はベートーヴェンの側に足場を置く、古典的なバランス感覚に重点を置いた演奏だと思います。

今回聴いたのは著作権切れの音源を使用して格安のCDを出していたHistryのCDです。おそらく市販LP盤からの板起こしで、さらに高音に偏ったイコライジングをかけていて金属的な苦しい再生音。正規盤で聴くと多少印象が変わるかもしれません。
(2011.05.23)