「オットー・クレンペラー(1885〜1973)」 クレンペラーにはシューマンの交響曲全集録音があります。 交響曲全集とはいえ1960年から69年かけての録音で、一曲ずつ録音を重ねていくうちに結果的に全集に至ったという趣。この「ライン」は最後に録音されました。 ・ニューフィルハーモニア管弦楽団 (1969年2月2,5−7日 ロンドン アヴィロード・スタジオ スタジオ録音) 晩年になるにつれて、ますます遅いテンポとなったクレンペラーの演奏の中には、あまりの遅さに最後まで聴き通すのが辛いほどの演奏もありますが、この「ライン」の遅さは、必然性の感じられるもの。大きな広がりと安定感のある悠然たる演奏でした。 対向配置を採用。 第一楽章62小節目の木管にトランペットを重ねる部分のように、クレンペラーが独自に手を加えた部分はありますが、今まで聞いてきたシューリヒトやトスカニーニに比べると改変は控えめです。 第一楽章250小節からの息の長い盛り上がりが印象的。 359小節のセカンドヴァイオリンの下降音のさりげない強調や、コーダの540小節からの溜めがちのテンポ設定にクレンペラーの個性が感じられます。 273小節のヴァイオリンにホルンを重ね、294小節からのファーストヴァイオリンはセカンドヴァイオリンと同じ音型にしていました。 第二楽章は重い荷物を担いで長い坂を上るが如く重苦しいテンポ設定。 このために中間部の濃い表情とともに、軽いレントラーのような舞曲とは次元の異なる巨大な音楽と化しています。 9小節目からのオーボエと、25小節からの4小節間木管をカット。 孤独感漂う音の壁が屹立する第四楽章はあたかもブルックナーの大交響曲のよう。 細かな部分をきっちり整然と鳴らしたフィナーレは、生真面目なほどマイペースですが、有無を言わさぬ説得力があります。138小節から3小節ホルンをカット。 遅いテンポと密度の濃い深い響きは、あたかも巨木の威容を仰ぎ見るような大交響曲を聴くような趣。シューマン独特のオーケストレーションを生かした蒼古とした渋い響きが特徴的な演奏でした。 今回聴いたのは国内盤CD。(TOCE14134) 最初ヘッドフォンで聴いた時には、磨かれたような綺麗な音で、クレンペラーの演奏から常に感じる強い意志のような力が感じられませんでした、 スピーカーで聴き直した時はさほどではありませんでしたが、終始違和感があったのも事実。 これはCD化の際のリマスターが原因のような気がします。アナログLPで聴きなおしてみたいところです。 (2011.06.17) |