「ディミトリ・ミトロプーロス(1896 - 1960)」 ギリシャ、アテネ生まれのミトロプーロスは、聖職者の名門の家に生まれ、生涯独身を通した孤高の指揮者。サン・サーンスに認められ、ブゾーニにピアノ、エーリヒ・クライバーに指揮を師事。 驚異的な記憶力の持ち主で、どのような複雑なスコアも一度目を通すだけで暗譜したそうです。とても人間技とは思えない数多くのエピソードが残っています。 ミネアポリス交響楽団(1937 - 1949)、ニューヨークフィルの音楽監督(1951- 1957)。 ミラノでマーラーの交響曲第3番のリハーサル中に心臓発作で死去。 ミトロプーロスの「ライン」はミネアポリス時代のスタジオ録音があります。 ・ミネアポリス交響楽団(現 ミネソタ管弦楽団) (1947年 スタジオ録音) 常に冷めた目で曲に対しているような感情移入を排したドライな演奏。 ミトロプーロスの棒さばきに隙はなく冷静にしてスリムな音楽運びですが、オケの薄い響きが気になりました。 シューマンの演奏としては、もう少しのロマンティックさと遊びも欲しいところです。 第一楽章冒頭からさわやかな音が流れます。18小節めからのクレシェンドの後、45小節からの主題再現の部分で大きくテンポを落し、音楽をふくらませていきます。 94小節めの第2主題が登場する場面で大きく落とし副主題を開始。135小節以降はゆっくりテンポを揺らせていました。 展開部185小節前で大きくテンポを落とした直後に音楽の流れが一瞬停止します。 これはSP録音からのCD復刻の際に繋がりがうまくいかなかったのかもしれません。 273小節で大きくリタルランド。 第ニ楽章のテンポは私が今のところ聴いた中では最速。厳しくも疾風の如く通り過ぎる音楽は、レントラーのような舞曲ではなくスケルツォの扱い。 58小節目で急に落す4分45秒。オケの反応が十分でなく、乱暴なほどの粗さを感じました。最後のピチカートは大きくテンポを崩していました。 第三楽章は開始こそ速いものの、5小節めの第4拍目からテンポが遅くなっていきます。 オケは他のメジャーオケと比べると奏者の技量にばらつきがあり、第四楽章のホルンとトロンボーンの高音などがかなり苦しそうです。 第五楽章も速いテンポで大空を滑空するが如し、とはいえアンサンブルに粗さが目立ちます。最後の299小節のシューラーの前に大きな休止がありますが、こちらは編集ミスではなさそうです。 他の演奏とは全く雰囲気が異なる第ニ楽章や、比較的テンポの動きが激しい第一楽章などかなりユニークな演奏でした。 ただ、オケがミトロプーロスの意図を十分にくみ取れてないように思います。 譜面には手を入れてありませんがオケは良く鳴っています。ミトロプーロスの天才的な耳の良さとバランス感覚が功を奏したのでしょうか。 今回聴いたのは、かつてHISTRYから出ていた著作権切れの音源を製品化したBOXもの。 オリジナルはSP録音からCD化したものです。演奏も録音もドライな響き。 (2011.06.27) |