「ライン」を聴く17 フランス系の指揮者たち・・・モントゥー
「ピエール・モントゥー(1875〜1964)」
パリ生まれのモントゥーはドビュッシーやサン・サーンス、グリーグとも親交があり、「春の祭典」やドビュッシーの「遊戯」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」などの数多くの名曲の初演を振った音楽史上に名を残す大指揮者です。
モントゥーのシューマンの交響曲録音は少なく、「ライン」のライヴ録音のほかは第4番の2種の録音があったのみと記憶しています。

・ボストン交響楽団
(1958年 1月25日  ボストン ライヴ録音)

かつて音楽監督だったボストン響客演時の録音。この時のプログラムは「ライン」、「ブラック・マスカーズ」(セッションズ作曲)、ヴァイオリン協奏曲第1番(シマノフスキ、独奏はトーテンベルク、)「ペトルーシュカ」というものでした。

颯爽とした音楽運びの中に各楽器が見事なバランスで鳴り切っている素晴らしい演奏です。

堂々たる風格が全曲に漂い、ロマン派初期のシューマンの交響曲があたかもブルックナーの音楽のような巨大な音楽として聴き手に迫ります。

第一楽章冒頭から決然たる力強い開始。若々しい推進力で音楽は進行。
35小節のp<sfの短いクレシェンドのさりげない強調、54小節からのチェロに聞かれる付点4分音符と三連符譜のつながりでの一拍めにはアクセント付加。
62小節はマーラー版のアイディアを採用してホルンを1小節後に移動していました。
159、187、519、521の小節でホルンにトランペットを重ねていました。

第二楽章はためらいがちに始まり、ゆったりとした大人の風格。
リピートなし、14小節からのpoco ritは指定箇所よりも早めに開始。115小節のホルンのffにトランペットを重ねています。
続く第三楽章は早めのテンポ。自然の流れの中にロマンティックさと穏やかな余裕が漂います。35小節の再現部から音楽が自由に揺れ始めました。

ゆっくりとした第四楽章は深い悲しみを湛えながらの巨大な音楽。
幾分明るめのボストン響のブラス群が明快に鳴り切っています。
波の如く押し寄せる悲劇的な音の壁の向こうに現れる52小節からのファンファーレはトランペットをトロンボーンと同じ型に改変。
60小節めの1小節の音の延ばした音に感じられる魂の叫びなど、さりげない一音一音が深い意味を持って鳴り響くのが圧巻です。最後に3回続くfpは段階的に音量を落していました。

第五楽章は遅いテンポで堂々とした開始です。この楽章は全曲中最もテンポの変化の大きい演奏でした。ホルンがフォルテで入る47小節めでテンポを大きく落とし、豪快にオケを大きく鳴らします。
98小節で再び減速した後、145小節めの大きなクレシェンドも効果的、ところどころのティンパニとトランペットのアクセント強調が聴き手の興奮を徐々に増幅していきます。
245小節めからコントラバスから他の楽器に連動する下から湧き上がるようなクレシェンドから音楽は感動的に展開。
299小節のシューラーではホルンにトランペットを重ねて輝かしい効果を演出していました。

今回聴いたのは私家版CDのDisco Archivaから出ていたCD−Rです。
明らかにラジオのエアチェック録音で、演奏会の実況風景の曲目紹介のアナウンス
から始まりその日の曲目が全て収録されています。
音は1958年録音としてはあまりよくなくモノラル、しかも第二楽章後半から第四楽章まで、チャイコフスキーの交響曲第四番第一楽章の演奏が混信しています。
同じ演奏のCDがカナダのWest Hill Radio Archiveから出ていますがこちらは未聴。

(2011.08.26)