「ラフマニノフの2番を聴く」42・・・ロシアの指揮者たち8 プレトニェフ
ミハイル・プレトニェフ(1957 - )

ロシアのアルヘンゲリスク生まれ、モスクワ音楽院でピアノを学び、1978年21歳でチャイコフスキーコンクール第一位。プレトニェフは、ピアニストとしてかなり早くから注目された存在で録音も多数あります。
1990年、豊富な資金力に物を言わせてモスクワ放送響などの老舗オケから優秀な奏者を多数引き抜いてロシア初の民営オケ、ロシアナショナル管を設立。自ら芸術監督となり、指揮者とピアニストの二足のワラジで活動中。

プレトニェフは、沼津でチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番を弾き(伴奏はフェドセーエフ指揮するモスクワ放送響)明確な打鍵とスマートで端正な音楽を聴かせました。
その後首席奏者の多くをプレトニェフに引き抜かれた直後のモスクワ放送響の演奏も聴きましたが、圧倒的なパワーと緻密なアンサンブルを誇ったかつての面影は見る影もなく失せてしまっていたのが印象に残っています。

・ロシアナショナル管弦楽団
(1993年11月  モスクワ音楽院コンサートホール スタジオ録音)
今では30近くあるといわれるモスクワの新興民営オケの元祖、ロシアナショナル管の比較的初期のグラモフォンへのラフマニノフ交響曲全集中の一枚。

スリムで軽量、ヘビーな物量で聴き手に迫る往年のロシアのオケのイメージからほど遠いインターナショナルな演奏でした。オケは対向配置。

第1楽章の序奏から暗さは皆無、ブラシュアップされた透明な響きと女性的なか弱き主部の歌わせ方が印象的。ティンパニの音が遠く、さらに繊細さを助長しています。
単調でテンポの変化に乏しく練習番号[17]以降のクライマックスも不発に終わっています。最後のティンパニなし。

第2楽章は軽やかに正確に弾けてはいるものの、生気に欠け優等生的な印象。Moderatoの横に流れる部分のスタイリッシュな歌わせ方には、爽やかさが感じられ良いと思います。練習番号[39]のグロッケンはほとんど聞こえず、このようなスパイスを聞かせる部分が中途半端なため全体としてのっぺりとしたパンチに欠ける演奏になっています。
速めのテンポで進む第3楽章も旋律の歌わせ方に余韻が足りないように思います。

オケは非常に優秀で、極めて速いテンポの第4楽章でも破綻のないのはお見事ですが、無味無臭の低カロリーな演奏でプレトニェフの主張が感じられませんでした。


(2007.02.07)