「ラフマニノフの2番を聴く」24・・・ロシアの指揮者たち2 スヴェトラーノフその2
「エフゲニー・スヴェトラーノフ(1928 - 2002)」

今回はスヴェトラーノフの95年録音を紹介します。

・ ロシア国立交響楽団
(1995年10月22,23日    モスクワ放送局第5スタジオ  スタジオ録音)
キャニオンクラシクスへのラフマニノフ交響曲全集録音中の1枚。カットなしの完全全曲録音。
作品への大きな共感に満ちた名演。遅めのテンポの中、音符のひとつひとつが意味を持って浮かび上がってくるのが壮観。あたかも作曲者の感情の動きと一体化しているかのようです。

第1楽章のAllegro moderatoの主題の歌わせ方は旧盤と同じ。練習番号23のPiu mossoのコントラバスのピチカートが巨人の歩みのように強調され、これから曲が大きく展開していく予感を聴き手に誘います。

第4楽章では第3楽章が回帰される部分の導入の自然さと続くアダージョの美しさが印象に残ります。練習番号89の前で大きなルバート、その後89の5小節目でテンポを倍近くまで落し金管群を嚠喨と響かせ巨大なクライマックスを築き上げていました。
第2楽章Meno mosso後半で幾分重さを感じさせるのがこの演奏唯一の欠点かもしれません。

旧盤では目まぐるしく変化する曲想の動きに、感情の制御のタガが外れた暴走気味の部分もありましたが、この演奏は巨大な造形が程よくコントロールされ、枯れた軽みさえも感じさせる演奏でした。

第2楽章練習番号38の20小節めからの第1ヴァイオリンの動きにグロッケン付加。
第4楽章練習番号76の一つ前にティンパニクレシェンド、練習番号87の1拍めシンバル付加。

このCDは、日本のキャニオンクラシクスがモスクワに器材を持ち込んで録音したものです。透明で繊細、清潔で軽めの音造りが新築されたばかりの木の香が漂う日本家屋を連想させ、大味なメロディア録音とは一線を画します。


(2006.05.30)