「ウラディミール・フェドセーエフ(1932 - )」 ロシアの名匠フェドセーエフは、レニングラード生まれ、初め国立民族楽器オーケストラの指揮者となり、その後モスクワ音楽院で学び直した後、ロジェストヴェンスキーの後任として1974年からモスクワ放送響の音楽監督となりました。 私は1988年と1997年の2回実演を聴きましたが、1988年の来日時はこのコンビの絶頂期とも言える時期で、指揮者とオケが一体となった圧倒的な「悲愴」を聴かせました。 ソビエト崩壊によるメンバーの流出後の1997年には、オケのレベルが大きく落ち込んでいたのが印象に残っています。 フェドセーエフのラフマニノフの2番には2つのスタジオ録音があります。 ・1987年 モスクワ放送響 ・1999年 モスクワ放送響 ・モスクワ放送交響楽団 (1987年 スタジオ録音) フェドセーエフの理知的な解釈とオケの確かな技量で聞かせる一枚。すっきり引き締まった響きで、譜面に書かれた音を忠実に再現。 第1楽章序奏は、速いテンポで息の長い旋律が次々と吹き上がり緊張感を次第に高めます。主部も粘らずインテンポで進みますが、リピート記号手前で大きくテンポを落としヴァイオリンソロへ繋ぎます。練習番号19の9小節目からのクラリネットセクションのオルガンのような重厚な響きが印象的。終盤の豪快な盛り上がりはなかなかのもの。 軽快な第2楽章は、練習番号38の19小節めにティンパニ付加。激しいテンポで展開するMeno mossoのフーガはオケのうまさが聴きもの。通常テンポを落とすことが多い終結部のブラスのコラールはそのままインテンポで歌わせていました。 大きなふくらみのある第3楽章は、moderatoの直後から息の長い加速を開始、練習番号51の頂点につなげます。甘さを排除した第4楽章では、終結部練習番号84からの猛烈な追い込みが印象に残ります。 スヴェトラーノフのような手放しの熱狂はなく、力強さの中にどこか冷めた雰囲気の漂う演奏でした。 ほぼ全曲録音ですが、第4楽章の練習番号76から数小節のカットがあります。第1楽章リピートなし第1楽章最後の小節のティンパニ付加なし。 今回聴いたのはAudiophilから出ている出所不明のCDです。標準的なステレオ録音ですが、第4楽章の練習番号59から突然オケの響きの質が変わるのが不自然。 (2006.06.05) |