「ウラディミール・アシュケナージ(1937 - )」 ラフマニノフと同じロシアのノブゴロド生まれ。モスクワ音楽院でピアノを学び、ショパン国際コンクール2位、チャイコフスキー国際コンクール1位となり以後世界的ピアニストとしてコンサート録音の両面で活躍。1970年に指揮デビュー。フィルハーモニア管、ロイヤルフィル、チェコフィルの指揮者を経て2004年からN響の音楽監督。 アシュケナージの指揮の実演ではチェコフィルとのマーラーの第7番を聴いたことがありますが、ずいぶんとネアカな人だなというのが第1印象でした。演奏も明るく開放的なものであったように記憶しています。 アシュケナージにとってラフマニノフは同郷の偉大な作曲家という意識が強く、特別な存在のようです。専業ピアニスト時代からラフマニノフの録音は多く、指揮者となってからも交響曲の全集録音と交響詩の録音があり、交響曲全集録音の前後にピアニストとして二つのピアノ協奏曲の全曲録音をおこなっています。 ・ ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 (1980年 アムステルダム・コンセルトヘボウ スタジオ録音) デッカへ録音したラフマニノフ交響曲全集中の1枚。 指揮者としてのアシュケナージの実力を決定付けたと同時にこの曲の解釈の転換点となった記念碑的な録音です。 暗く地の底を這う演奏とは対照的なラフマニノフ。明るく解放的なラフマニノフでした。冷静さの中に作品に対する深い愛情が感じられるのが素晴らしいと思います。 カットなし。第1楽章終結部のティンパニの1打なし。 第1楽章のAllegro moderatoの主題と第3楽章52以降で弦楽器に絡むクラリネットやホルンのソロの美しさ、第3楽章の中間部の練習番号51からの感動的な盛り上がりが印象的です。 特に第4楽章は生きる喜びに満ちた歓喜の大爆発。時にはコミカルなほどネアカなラフマニノフです。この演奏を聴いているうちに、この曲が作曲された時のラフマニノフは人生で最も幸福だった時であったことを思い起こしました。 これまでのアシュケナージの指揮には、自分の意図がオケに充分伝わらず、うまく表現しきれていないもどかしさが感じられる演奏が多かったのですが、この演奏はコンセルトヘボウ管がアシュケナージの棒に敏感に反応し、見事な演奏を聴かせています。オケの音色も極上。 (2006.06.10) |