今回はプレヴィンの二つの演奏を紹介します。 ・ ロンドン交響楽団 (1973年1月3,4日 ロンドン キングズウエイホール スタジオ録音) EMIへの全集録音中の一枚。この曲の再評価のきっかけとなった演奏ですが、その後、この演奏に続くカットなしの録音がなかなか現れず。カットなし全曲録音の代表的な演奏として長い間カタログに残っていました。 最近の優れた演奏を聞いた耳ではさほど新鮮さは感じられませんが、旋律をくっきり硬めに浮き上がらせた横に流れる叙情的な演奏で、非常に判りやすい演奏だと思います。 解釈そのものは旧盤とあまり変わらず、第1楽章のAllegro Moderatoも序奏とあまり変わらぬテンポで進行。 第1楽章練習番号25からバスを硬い響きでゴリゴリと強調させるなど、単調さを回避する変化を所々で聴かせます。第1楽章最後のティンパニの1発なし。 第2楽章練習番号36前のバスクラリネットを強調、鋭角的なリズムで再現部から華やかに盛り上がります。 第3楽章では、練習番号51の盛り上がりの手前で弦楽器の音量を落とし、響きの奥から管楽器を沸きあがるように浮き出させるのが印象的。しなやかで自然な第4楽章も78以降から素晴らしい盛り上がりを聴かせていました。 ・ ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団 (1985年3月26,28日 ロンドン、ウォルサムストウ・タウンホール スタジオ録音) ロイヤルフィル首席指揮者就任後まもなくのテラークへの録音。遅いテンポ、ダイナミックスとテンポの緩急の幅が大きいドラマティックな演奏。熟成したまろやかな響きはロイヤルフィルの特性ですが、ロシア的な情緒からほど遠い英国的な上品も漂います。 第1楽章序奏がかなり遅く、主部のAllegro Moderatoが旧盤と同じテンポなので、序奏が遅くなった分主部とのコントラストが明確になりました。最後のティンパニの1発なし。 第2楽章ではModeratoの前でちょっとタメを作り、ルバートをたっぷりかけて歌います。練習番号38の19小節目にティンパニ付加。 第3楽章は遥か遠くから忍び寄るような冒頭のヴィオラが印象的。甘く退廃的な大人のムードは旧盤を大きく上回りますが、第4楽章はリズムに明確さが欠け鈍重な印象を受けました。 内省的なオセンチさ満載の叙情的な演奏で練れた解釈のうまさは感じますが、音楽が甘美さの中に完全にメルトダウンしてしまった印象です。私には過度に甘すぎるように感じました。 以下はロンドン響(LSO)盤とロイヤルフィル(RPO)盤の演奏時間の比較です。 I U V W LSO 18'59" 10'00" 15'37" 13'59" RPO 20'15" 10'10" 17'07" 14'46" (2006.07.17) |