「レナード・スラットキン(1944 - )」 ロスアンジェルスに生まれ、父は指揮者のフェリックス・スラットキン。ジュリアード音楽院で指揮をモレルに学び1966年セントルイス響を指揮してデビュー。ニューオリーンズフィルの指揮者を経て、1979年セントルイス響の音楽監督。その後、ワシントン・ナショナル響音楽監督、BBC響主席指揮者を歴任。 スラットキンはN響にも何度か客演して幅広いレパートリで安定した名演を聴かせました。セントルイス響の実力を飛躍的に向上させ、1983年には「タイム」誌の全米のオーケストラ・ランキングで二位となったこともあります。 ・ セントルイス交響楽団 (1978年 スタジオ録音) VOXのラフマニノフ交響曲全集中の1枚。スラットキンの本邦デビュー盤となった録音。 均衡の取れたすっきりとした造形、現代的なロマンティックさに軽快なスピード感が共存した名演でした。オケのアンサンブルも素晴らしく、バランス良く整理された響きを聴かせます。 第1楽章序奏から、明快でしなやかな響きに惹かれます。練習番号2の前、Poco piu mossoから次第に加速。主部も粘らず早めのテンポでスマートに進行。最後の一音にティンパニ加筆。第2楽章も落ち着いた曲運びで進み、小気味良いティンパニのアクセントを効かせながらテンポを上げていきます。終結部の柔らかなブラスのコラールも印象的。 一歩一歩踏む固めるような第3楽章は、肩の力が抜けた自然体の美しさ。弦楽器のピチカートにも深い余韻が感じられ、練習番号50前のオーボエの詩情溢れるソロも秀逸。続く練習番号53の密やかなヴァイオリンの歌にはぐっと胸を打つ懐かしさが漂います。55のmf指定のヴァイオリンの強調も効果的。第4楽章も第3楽章再現部分から緊張感に満ちた盛り上がりが見事でした。 清潔感のある淡い響きと、端正で毅然としたロマンティシズムが漂う素晴らしい演奏だと思います。 今回聴いたのは、VOXターナバウトのSQ4チャンネルLP盤。4チャンネルLPを通常のステレオで再生すると音がふやけがちな傾向がありますが、この録音はピリッと引き締まったよい響きでした。 (2006.07.22) |