「ラフマニノフの2番を聴く」35・・・リットン
「アンドリュー・リットン(1959 - )」

ニューヨーク生まれ、ジュリアード音楽院でピアノと指揮を学びワシントン・ナショナル響の副指揮者となる。1982年ルパート指揮者コンクール1位、以後イギリスを中心に活躍。1989年にボーンマス響の首席指揮者。1992年から2006年までダラス響の音楽監督。2003年からベルゲンフィルの音楽監督。

・ロイヤルフィルハーモニック管弦楽団
(1983年5月 ロンドン アヴィーロードスタジオ スタジオ録音)

Virgin Classicsへのラフマニノフ交響曲全集録音中の一枚。リットンの活躍の場がイギリスを中心に広がり始めた時期の録音。颯爽とした上昇機運に満ちた勢いのある演奏でした。
良くも悪くもアメリカ的、オケを豪快に鳴らし映画音楽を聴くような甘さと親しみ易さが全編を支配しています。

第1楽章序奏のヴァイオリンとヴィオラのレガート気味のねっとりとした絡み合いは、速いテンポで進行するためくどさは感じられません。Allegro moderatoの1小節前でテンポをぐっと速め、主部に突入するところなど鮮やかなものです。リピート有り、最後のティンパニのイッパツはなし。

第2楽章も安定したテンポ感で進行、con motoはテンポを落し、Meno mossoの一拍目のフォルティシモは強烈な強さ聴き手を驚かせ、続く弦楽器の激しい動きが印象的。練習番号38の19小節めにティンパニ追加。練習番号39の6小節目のトランペットの内声を強調するなど、他の演奏では聴こえてこないような音が次々と現れます。後半のModeratoは前半よりも遅いテンポ。

ハリウッド的な甘さ満載の第3楽章を経て第4楽章は、練習番号59の13小節目からテンポを一旦落し次第に加速、冒頭回帰の直前で助走をつけながらの猛烈なアチェレランドなど、同じパターンの繰り返しで冗長になりそうな部分は楽譜上にないテンポと音量変化で聴き手の興味を繋ぎ止めます。止まりそうなほど遅い練習番号66。77の4小節前と83での大ブレーキ、後半のクライマックスへの出発点である練習番号85のトロンボーンを通常の倍テンポとするなど、手練手管を駆使して盛り上げを演出。

大きなテンポの揺れやレガート多用の歌わせ方など、聴いた面白さでは無類の演奏ですが、私には多少オーバーで浪花節調の表現に感じられました。ただ、さほど嫌味さを感じさせないのは曲自体このような解釈を受け入れる下地があるからかもしれません。


(2006.09.20)