「ラフマニノフの2番を聴く」36・・・ホセ・クーラ
「ホセ・クーラ(1962 - )」

アルゼンチンのロザリオ生まれ。最初作曲とピアノを学び15歳で合唱指揮者としてデビュー。後にテアトロ・コロンの合唱団員のかたわら劇場附属芸術学校で作曲と指揮を学ぶ。1988年から本格的に歌を習い始め1992年テノール歌手として劇場デビュー。1997年トリノにおいてアバド指揮の「オテロ」で大成功を収めて大ブレーク、以後ドミンゴに続くヴェリズモ・テノールとして活躍中。

クーラは本格的に指揮も学んでいて、ラフマニノフの交響曲第2番や「新世界より」などの録音があります。

・ シンフォニア・ヴァルソヴィア
(2001年12月3,4日 ポーランド放送局ルトスワスキ・コンサートスタジオ  スタジオ録音)

ホセ・クーラが自ら立ち上げたレーベル Cuibarへの録音。現在Avieを通じて発売されています。
シンフォニア・ヴァルソヴィアは1984年にポーランド室内管を母体として設立された若いオケです。現在の音楽監督は作曲家として著名なペンデレツキで、ホセ・クーラが首席客演指揮者。

曲に対する深い思い入れが感じられる、のめり込み感情移入型の演奏。良く歌い横に流れ、クーラの変化の大きい棒にオケもよく付いています。

第1楽章のAllegro Moderatoの主題はデリケートに歌い上げますが、練習番号7の前からのテンポを落とし方が多少の停滞感を感じさせます。練習番号21でヴァイオリンの音量を僅かに落し木管群の三連符を強調。練習番号24の16小節目でトランペットが微妙に飛び出し気味。リピート有り、最後のティンパニはなし

生命感溢れる第2楽章では、Moderato前のクラリネットソロの粘り腰が印象的。続くModeratoもオーボエが美しく弦楽器に絡みます。Meno mossoは激しさが足りず多少物足りなさを感じました。練習番号37のpoco a poco accel.ももう少しキレの良さが欲しいところです。練習番号38の19小節めにティンパニ付加。

バランス良い響きでしっとり歌い上げた第3楽章は、オケ全体がクレシェンドする部分で木管楽器を弦楽器よりも速めに音量アップ。練習番号53からはミュートをつけた弦楽器が実に美しく響きます。特にテンポを落しながらたっぷり歌う後半が特に素晴らしく、練習番号56からのpoco accelからrallentandoに至るテンポ設定のうまさは、とても余技の棒とは思えませんでした。
第4楽章は前半でリズムが前のめりになる部分があるもののネアカで熱狂的なラテン系のノリで快調に飛ばします。練習番号63のa tempoは短めに演奏。後半も熱狂的な出来でした。

明るい歌に満ちた解放的な演奏でした。オケは多少弱いがクーラの快適なテンポに乗って熱い演奏を展開、現代的でスカッとした名演です。
(2006.09.27)