「ラフマニノフの2番を聴く」37・・・デュトワ
「シャルル・デユトア(1936~)」

スイス、ローザンヌ生まれ、アンセルメ、ミュンシュに学び1960年、カラヤンの招きでウィーン国立歌劇場でバレエを指揮。1977年にモントリオール響の音楽監督となりラヴェルの名演で大ブレイク、以後フランス国立放送管、N響の音楽監督(2003年まで)。

・フィラデルフィア管弦楽団
(1993年2月 フィラデルフィア メモリアルホール  スタジオ録音)

デッカへのラフマニノフ交響曲全集中の一枚。華麗な中に適度な大衆性を持ったラフマニノフの音楽はデユトワの芸風にぴったりの音楽。この演奏も色彩的で磨き上げられた音を遅めのテンポで甘くたっぷりと聴かせる美演でした。

第1楽章序奏は通常のテンポで進行、主部のAllegro moderatoに入っても物理的なテンポはあまり変わりませんが旋律そのものが大きく動きながら流れていくので停滞感はありません。練習番号13のあとのmeno mossoはあっさりそのままで通り過ぎ、練習番号16の9小節目(二分音符=80)から次第に加速。練習番号23のpiu mossoでのコントラバス強調が印象的。最後の小節のティンパニの一発あり。

第2楽章は甘いルバートをかけるmoderaoと、con motoの木管楽器の柔らかな響きに連動する弦楽器へ流れが実に美しく、中間部のmeno mossoは一転して激しい表現で聴かせ、間奏曲風なスパイスの趣。

後半で、譜面にないトランペットの合いの手や小太鼓が通常より早めに出る部分があるなど独自の改変がありました。これはデユトワの解釈というよりも作曲者自身が何度か指揮台に立ったフィラデルフィア管のみに伝わる伝統かもしれません。

第3楽章は弦楽器の甘くセンチな美しい音色が実に美しく響きます。練習番号50以降の大きなカーヴを描きながらの盛り上がりも見事なもの。
第4楽章も洗練されたテンポ運びと多彩な音色の変化で楽しめる演奏です。練習番号74からの息の長いクライマックス、練習番号79からの旋律線を短めに切りながらテンポに変化を付けるちょいと気取ったハードボイルドな盛り上がりが印象的。

オケを美しくマイルドに磨き上げることに徹した演奏でした。触れれば蕩けてしまいそうな儚さが漂う女性的な一面を聴かせる半面、終楽章のようにがっちりとした構成力を感じさせる部分もあり、なかなか聴かせ上手な演奏と言えそうです。


(2006.10.20)