「ラフマニノフの2番を聴く」46・・・尾高忠明
尾高忠明(1947 - )

鎌倉生まれ。父は、ベルリンフィルやウィーン響にも客演し戦中戦後のN響を支えた指揮者の尾高尚忠。指揮を斎藤秀雄、ハンス・スワロフスキーに学ぶ。
現在、札幌交響楽団音楽監督。BBCウェールズ響と東京フィルの桂冠指揮者。

・BBCウェールズ交響楽団
(1991年9月8, 9日 swansia brangwyr ホール スタジオ録音)


英ニンバスへのラフマニノフ交響曲全集録音中の一枚。実り多きBBCウェールズ響首席指揮者時代の代表的な録音です。曲への深い共感に満ちた叙情的でロマンティックな名演でした。オケの透明な響きに品格も感じられます。

第一楽章冒頭のコントラバスの響きから、あくまで軽い明るく見通しよい音楽が流れていきます。楽譜に忠実にPoco piu mossoから加速し続くA tempoの盛り上がりを演出。主部のAllegro Moderatoも爽やかでもたれずコントラバスも軽快。練習番号10の二つ前でほんの気持ちのMeno mosso。リピートはなし。
続くヴァイオリンソロは大きく粘ります。練習番号13の不安感、練習番号14の4小節前のカタストロフもソツなく効かせ、随所で聞こえるホルンのゲシュトプもビンビンに決まっています。練習番号17で巨大なクライマックスを築き、練習番号20からはテンポが自在に揺れ動き最後の小節はティンパニの一発有り。

第ニ楽章も快調に飛ばし、練習番号30のトロンボーンのビシッとしたアクセントも痛快。練習番号37から猛烈な加速で主題回帰。練習番号44のMeno Mossoでは4小節前のファゴットソロからテンポを落とします。
清楚な叙情に満ちた第三楽章は心をこめた歌が感動的。練習番号49のオーボエとファゴットの対話が美しく響き、練習番号51から加速し頂点に駆け上ります。終結部の息の長いピアニシモも見事なもの。

第四楽章では練習番号69の第三楽章回想前で絶妙なタイミングでテンポが落ちていきます。さらに陽炎のように揺れながら同調するホルンも美しく、続くAdagioでは弦楽器が甘くせつなき歌が印象的。練習番号75からの嚠喨としたトロンボーンの響きを前触れとして練習番号85でのトロンボーンがクレシェンドでしだいにクライマックスへ向かいます。さらに第2ヴァイオリンとヴィオラのすり足を支えるチェロを明確にして緊張感を高め、終局のクライマックスへ導いていました。

程よい甘さの中にパンチを効かせた厭きのこない演奏です。低俗に陥らずに品格を保っているのが良いと思います。
(2007.03.13)