「幻想交響曲を聴く」57 フランス系の指揮者たち11  ・・・ヴァンデルノート
ここで再びフランス系の指揮者に戻ります。
アンドレ・ヴァンデルノート(1927 - 1994)、ベルギーのブリュッセル生まれ、1951年のブサンゾン指揮者コンクールに優勝。
50年代、モーツァルトやブラームスなどにパリ音楽院管やベルリンフィルを振って爽やかな名演を残し、新世代の指揮者のホープとして大きな期待を集めましたが、60年以後録音が全く絶えてしまい、その消息も定かでない状態になってしまいました。

数年前ベルギーの放送局のアルヒーヴからCD5枚分の録音が発掘されましたが、かつての面影が消えたダルな演奏に終始したその録音に、長い間ヴァンデルノートの復活を待ち焦がれていた多くのファンを一挙に失ってしまいました。

幻想交響曲は、若い頃と問題の晩年の放送録音があります。

・フランス国立放送管   1960年 スタジオ録音
・ベルギー放送管     1990年 ライヴ録音

・フランス国立放送管絃楽団
(1960年   パリ スタジオ録音)
アメリカのマイナーレーベル、コマンドの35ミリマグネティックフィルムによる録音。
今回は70年代末に日本コロンビアから出た国内廉価盤LPで聴きました。
各楽器が明瞭で良好な録音だとは思いますが、木管楽器がクローズアップされすぎで問題有り。

演奏はフランス風のカラーを強調した美しくも色彩的なもの。木管群が強調された個性的な楽器バランスですが、フルートのデユフレーヌをはじめ、伝説的なソリストが揃っていた時期のオケの妙技は聴いていて実に楽しめます。特に粋でおしゃれな第2楽章と、勢いがありドラマティックな第5楽章はなかなかの出来。「怒りの日」は息詰まる緊張感も感じられます。

ただ細部ではアバウトで、オケの個人技に任せたために第1楽章後半や第4楽章でオケ全体が走り出す箇所があり、第1楽章のテンポの揺れも不自然。
これは聞き手の不安を誘うものがあります。「怒りの日」の鐘は明るい響きですが、微妙に遅れ気味。

・ベルギー放送管絃楽団
(1990年11月23日 ブリュッセル ライヴ録音)

90年代末、WEITBLICKレーベルから出た5枚組CDセット中の一枚。

このセットは長い間期待されていたヴァンデルノート待望の最新録音ということで大きな話題となりましたが、演奏内容のあまりの悲惨さにこれまた話題となった問題の演奏。続編が計画されながらも、第1弾のあまりの反響の大きさ?に、続編の発売は結局流れてしまったようです。

実際このセットに収録されていた「巨人」やチャイコフスキーの交響曲第5番は、なぜ発売したのか発売元の良識を疑うほどの、思わず絶句のアンサンブル完全崩壊。
発売当時の音楽雑誌の評論では、アマオケ並と酷評されていました。
(もっとも、昨今のアマオケの方が数段上の演奏をします。)

その中にあって「幻想交響曲」は、この中では比較的出来が良い方の部類で、落ち着いたテンポ運びを見せる第1楽章や第4楽章は勢いがあってこれは良し。

第4楽章最後のふくらみを持たせた柔らかなファンファーレと第5楽章中間部の内声部と2番ホルンのゲシュトップの強調など往年のヴァンデルノートを彷彿させる個性的な表現も飛びだします。

しかしヴァンデルノート自身、オケのアンサンブルを整えること自体に無関心のようで、第3楽章では弦楽器のピチカートや木管が随所で飛び出し発生。
勢いはありますが、ffで腰砕けとなるオケ、ヴァンデルノートの解釈も長年の経験の延長上のルーティンワークの典型。かつての颯爽とした録音を知る者にとっては、聴いていて情けなくなる演奏です。
さらに残響の少ないデッドなホールの響きが、音色の魅力に乏しいオケの非力さを曝してしまいました。
(2004.12.07)