コンスタンチン・シルヴェストリ(1913 - 1969) ルーマニアのブカレスト生まれ、10才でピアニストデビュー、ブカレストフィルやブカレストオペラの指揮者として活躍後、イギリスを中心に活躍しボーンマス交響楽団の首席指揮者(1961 - 1969)。 シルヴェストリは、ルーマニアやチェコを中心にモノラル期に数多くの録音がありますが、それらの多くはCD化もされず現在廃盤。代表的な録音は、EMIとの契約によるボーンマス響やウィーンフィル、パリ音楽院管などを振ったロシアものや東欧もののステレオ録音。 シルヴェストリの演奏は、その場その場のインスピレーションによる個性的な解釈で知られ、ツボに嵌った時は雄大でダイナミックな名演になることもありますが、一歩誤ると支離滅裂の演奏に陥る危険もありました。 ただ、残された録音に虚心に耳を傾けると、個性的な中にも何か天才的な閃きの瞬間があるような指揮者です。N響の来演時団員の間でも賛否両論、かなり意見が分れたそうです。 ・パリ音楽院管絃楽団 (1969年 2月6 - 8、11日 パリ ワグラムザール スタジオ録音) 横に流れる草書風の演奏。テンポを大きく動かす感情の起伏の大きな演奏であることは、シルヴェストリの芸風からある程度予想できることですが、第2楽章の軽妙なテンポの変化やじっくり歌う第3楽章の崇高な美しさなど、けっして奇を衒っただけの指揮者ではないことを伺わせます。特に第2楽章後半302小節目のクラリネットソロ部分でごく自然にテンポを落とし名残惜しむような表情を見せるところなど印象に残りました。 第1楽章イデーフィクス2小節前のアチェレランド、pからffにクレシェンドする過程でテンポを上げてffの頭に必ずアクセントをつける部分や第4楽章の行進曲部分に入る2小節前の加速、第5楽章で鐘の出を導く前のチェロとベース部分の入る直前84小節目のルフトパウゼなど、いささかクサイ演出が見えるのも事実ですが、アクセントをごつごつ付けたマシンガンのようなブラス群の爆発と、ホルンのゲシュトップがビンビンに聴かれる第4、5楽章など、思わずニヤリとさせられる面白さがあります。パリ音楽院管の色彩豊かで明るい音色も華やかさを感じさせました。 今回聴いたのはEMI原盤のワールドレコードクラブから出たLPですが、第3楽章の嵐が収まった直後のチェロのみののばし部分(112小節)で、1小節多くチェロが延ばしていました。 これは当初第3楽章途中でA面からB面に変わる箇所としてこの箇所を予定し1小節ダブッて編集したマスターテープをそのまま使って、別の箇所で第3楽章を分割しカッティングしてしまった結果のように思います。 (2004.09.09) |