オットー・クレンペラー(1885 - 1973) マーラーの弟子にして、機械録音からステレオ録音まで数多くの録音を残した巨人クレンペラーの演奏です。 クレンペラーには以下の3種類の録音があります。 ・フィルハーモニア管 1963年 スタジオ録音 ・ストックホルムフィル 1965年 ライヴ録音 未発売 ・ニューフィルハーモニア管 1966年 ライヴ録音 未発売 ・フィルハーモニア管絃楽団 (1963年 4月23 - 26日、9月17,18日 ロンドン・キングズウェイホール スタジオ録音) 標題に囚われず楽譜に書かれていることを忠実に再現した純音楽的な名演。 ベルリオーズの音楽がモーツァルトやベートーヴェンのように純粋にして峻厳に響きます。 ゆったりとして雄大なクレンペラーの音楽、特に晩年は肉体的な衰えから来る遅いテンポによって緊張感に欠け、流れが弛緩した悲惨な出来のものもありましたが、この演奏は一音として無駄な音はなく、ベルリオーズの書いた音符をここまで精密に完璧なバランスを持って音化した演奏は、他に類を見ません。 ミステリアスな美しさを感じさせる第1楽章冒頭。主部に入ってからは、対向配置のオーケストラが実に効果的、第2ヴァイオリンとヴィオラの優秀であるために、各声部の絡み合いが手に取るように判ります。終結部での弦楽器の弱音にそっと絶妙のバランスで入る木管の精妙さ。甘さを抑えた第2楽章に入るコルネットのオヴリガードソロのバランスもばっちり決っています。 牧歌的なのどかさの中にも緊張感に満ちた第3楽章は、まるでベートーヴェンの「田園」のようです。 オケが鳴り切っている第4楽章、第5楽章の最後にわずかな加速を見せますが。 不動のテンポに支配された風格溢れる名演奏でした。 第2楽章コルネットのオヴリガードソロ有り、第1楽章リピート有り。 (2004.09.13) |