「幻想交響曲を聴く」40・・・カラヤンその2
今回はカラヤンの2回目、ベルリンフィルとの二つの録音です。

・ベルリンフィルハーモニー管絃楽団
(1964年12月27 - 30日 ダーレム イエス・キリスト教会 スタジオ録音)
グラマラスでリッチな響きのベルリンフィルの優秀さが際立つ演奏ですが、フィルハーモニア管で聴かれたテンポを大きく揺らすロマンティックさが影を潜め、古典的で常識的な解釈だと思います。イデーフィクス以後のテンポの変化はほとんどありません。
第2、第3楽章で名手ツェラーのフルートの澄みきった美しさが印象に残りました。

第5楽章の「怒りの日」の金管はフィルハーモニア管のような極端なレガートでなく、短く切るごく常識的な形。「魔女のロンド」ではチェロのスルポンティチェロ有り。
地響きをたてるような大太鼓が特にこの楽章の後半を大きく盛り上げていました。
鐘は二つの鐘を重ねて打ったような複雑な響き。

全体にゴージャスでソツのない演奏ですがフィルハーモニア管盤のような熱さはなく、冷めた演奏だと思います。


・ベルリンフィルハーモニー管絃楽団
(1974年10月14,15日 1975年2月21日 ベルリン フィルハーモニーホール スタジオ録音)
磨きぬいた吟醸酒のような純度の高い響き、演奏全体に白夜的な美しさと静けさが支配した演奏です。
極めて遅いイデーフィクスでは、旋律の末尾をすーと力を抜いて流していくのが特徴的。洗練の極みの第2、3楽章はここでもフルートが実に美しく響きます。
こちらのフルートはゴールウェイ。

レガート多様の第4楽章は、ファゴット4本の部分後半から急速な加速。
第5楽章冒頭の低音弦のもだえるような独特の歌わせ方と祭囃子のような華やかな軽快感を見せるクラリネットソロは、他のカラヤンの幻想からは聴かれなかった解釈。
「魔女のロンド」のフーガ部分で、弦楽器がまるでバッハのフーガのような均整のとれた古典的な進行を見せる中、管楽器がまるで場違いな合いの手を入れてくる様は、まさに古典派と初期ロマン派の対比を強調するかのような印象を与えます。
スルポンティチェロ有り。コル・レーニョ部分ではヴォラの内声部を強調。

「怒りの日」の鐘は、ノートルダム寺院の鐘のような巨大で大きな広がりを持つゴゥオーンといった音で、まるで鐘のオバケ。
これは、オケとは明らかな別採り録音で、大きな違和感を覚えます。


(2004.10.05)