「幻想交響曲を聴く」45 サーと呼ばれた指揮者たち4・・・マッケラスとショルティ

サー チャールズ・マッケラス(1925 - )
アメリカ生まれ、2才のとき両親の故郷であるオーストラリアに移り、シドニーでオーボエを学びシドニー響の首席オーボエ奏者の後、チェコに留学し名指揮者ターリヒに師事。ハンブルク国立歌劇場の指揮者を経て、サドラーズ・ウエルズオペラの音楽監督、BBC響の首席客演指揮者。比較的早い時期から録音は多く、特に師ターリヒから影響を受けたモラヴィアの大作曲家ヤナーチェクの解釈については現在他の追随を許さない存在です。
1979年ナイトの称号を授与。

私はウィーン国立歌劇場でマッケラスを聴いたことがあります。国立歌劇場のバレエ公演でバレエの印象は全くありませんが、チャイコフスキー、ファリア、ヒンデミットといった曲を手際良くまとめ、ウィーンフィルの特質を最大限に生かしたマッケラスの素晴らしい職人芸を堪能しました。中でもチャイコフスキーの弦楽セレナードのワルツで、絹のような艶やかで優美な響きは今でも最高の思い出です。

・ロイヤルフィルハーモニック
(1994年 1月 ロンドン CTSスタジオ スタジオ録音)
ロイヤルフィルの自主レーベル、ロイヤルフィルハーモニックコレクションによるCD。DIYショップやスーパなどのワゴンの中に一枚500 - 800円くらいで見かけます。このシリーズ、廉くて録音も優秀、演奏者もマッケラスやレッパード、エルムレル、シモノフといったベテランからパーヴォ・ヤルヴィなどの若手まで、なかなかの実力者を揃えていてお買い得。

オケは対向配置で、第1、第4楽章リピート有り、第2楽章にコルネットソロを加え、第4楽章の冒頭ホルンもゲシュトップ有りのベーレンライター新版にきわめて忠実、演奏もインテンポで進めた淡白で中庸の演奏。第2、3楽章も美しく、特に低音ブンブンの第2楽章ワルツは聴いていて心地よいものがあります。
第4,5楽章はブラスが明快に鳴りきり、音を割った第4楽章の3番トロンボーン、第5楽章後半のホルン、パンチの効いた怒りの日のチューバなど、聞かせどころをはずさないマッケラスの職人芸が光る演奏だと思います。
怒りの日の鐘はチューブラベル、第5楽章スルポンティチェロ有り。各楽章の最後の音フェルマータが極端に長い演奏でした。


サー ゲオルグ ショルティ(1912 - 1997)
ブタペスト生まれ、バルトーク、コダーイ、ドホナーニなどにピアノ、作曲を師事。
バイエルン州立歌劇場、イギリスのロイヤルオペラ、シカゴ響、ロンドンフィルなどの音楽監督を歴任、1971年イギリス王室からナイトの爵位を贈られています。

ショルティはピアノの名手として知られ、1942年ジュネーヴ国際コンクールピアノ部門で優勝もしています。ショルティの録音は極めて多く、特にシカゴ響時代の録音は世界最高性能のオケを駆使した優れもの揃い。ショルティの幻想交響曲は2種類あります。

・シカゴ交響楽団    1972年   スタジオ録音
・シカゴ交響楽団    1992年   ライヴ録音
他にイギリスのテレビ番組中で、シュレスヴィヒ・ホルスタイン音楽祭管を振った第4楽章の練習風景映像もあります。

・シカゴ交響楽団
(1972年 シカゴ オーケストラホール スタジオ録音)
硬質で整然とした曖昧さのない明快な演奏。シカゴ響は精度の高さではまさに世界最高性能で、第1楽章後半の弦楽器の絡み合いも完璧、第3楽章終結部のティンパニなどまるで一人で叩いているかのような正確なアンサンブルです。第2楽章の終結部で、低音弦楽器から順に各楽器が大きなうねりを持って駆け上る箇所などは実に壮観。

物量と力で押しきった感もありますが、ドラマティックな山場を各所に少しずつ作り上げる聴かせ上手な演奏と言えそうです。各楽器のソロも見事ですが、名手ジェイコブの吹く「怒りの日」のチューバには圧倒されました。遅いテンポでアクセントをゴツゴツつけた第4楽章など、エルボーを効かせたショルティの指揮姿が目に浮かびます。
第1楽章リピート有り、「怒りの日」は鐘を使用していますが、ずいぶんと遠くから聞こえます。


(2004.10.23)