「幻想交響曲を聴く」51・・・チョン・ミョンフン

チョン・ミョンフン(1953 - )
韓国ソウル生まれ、ヴァイオリニスト、チョン・キョンファは実姉、もう一人の姉もチェリスト。ピアノを学び1974年チャイコフスキーコンクール ピアノ部門2位。
ジュリアード音楽院で指揮を学び、1978年からロスアンジェルスフィルの副指揮者となりました。その後ザールブリュッケン放送響首席指揮者、パリ・オペラ座音楽監督を歴任、現在サンタチェチーリア音楽院管、フランス国立フィル首席指揮者、東京フィルのスペシャル・アーティスティック・アドヴァイサー。
パリ・オペラ座音楽監督時代に大改革を実施し、その結果パリ・バスティーユ管の実力が飛躍的に向上。しかし政争に巻き込まれ1994年辞任。
今回はスタジオ録音とフィルハーモニア管との来日時の演奏を聴きました。

・パリ・バスティーユ管絃楽団
(1993年 10月 パリ・バスティーユ劇場 スタジオ録音)
1995年日本レコードアカデミー大賞受賞盤。オリジナルカップリングはデユティーユの「メタボール」で、再発盤からははずされてしまいましたが、これはこのカップリングで聴くべきCD。

第1楽章リピート有り、ティンパニの小気味良さ、ffとpの対比の見事さが光る演奏。
オケの配置は通常配置。第2楽章オヴリガードソロ有り、このコルネットのバランスが実に良く、色彩豊かなフランス的な雰囲気が良く出ていました。
内省的で内部に情熱を秘めながら、じわりじわりと盛り上がる第3楽章。
第4楽章はリピートなし、ズバズバとした小気味良さに快感を覚えますが、マーチの主題はレガート気味の独得の歌いまわしで、これは好き嫌いが出ると思います。

第5楽章、冒頭チェロとコントラバスの柔らかな響き、鐘の音は明るすぎず重すぎず、強弱のコントラストがかなり細かく、シンセサイザーのような中性的な音。最後は急速な加速。
確かに優れた演奏ですが、今まで聴いた演奏と比べると、大賞を取るほどの演奏かは疑問。


・フィルハーモニア管絃楽団
(1995年9月19日  東京芸術劇場   ライヴ映像)
フィルハーモニア管との来日映像、BSのエアチェックです。この日はメシアンの「忘れられた捧げ物」、ラヴェルの組曲「マ・メールロア」が演奏されています。
アンコールはショスタコーヴィチの交響曲第6番スケルツォ。

オケは古いタイプの対向配置で、1stVn−Cb−Vc−Vla−2ndVn。ハープはヴィオラの後ろに並んで2台。コルネットも2本使っていますが、第2楽章オヴリガードソロなし。

第1楽章のゆっくりとした夢見心地からイデーフィクスへの転換の鮮やかさ、全曲を通して感じられるピリリとした緊張感、第5楽章「怒りの日」直前の急加速から「怒りの日」のブラス群の柔らかなブラスクワイアーなど、緩急、動と静の対比が見事に音化した演奏。

第1楽章リピート有り、鐘は舞台裏から聞こえます。第4楽章の行進曲の歌わせ方はCDのようなクセがなく、ごくすっきり。
オケのアンサンブルも緊密にして極上、CDを大きく上回る鮮烈な演奏だと思います。


(2004.11.14)