この連載も60回となり紹介した演奏も約90種、2年越しの連載だった「第九を聴く」を越えるものとなりました。 手持ちの録音の中で視聴は終わりながら紹介しきれていないものは多く、バーンスタイン、チェリビダッケ、ホーレンシュタインなどの大家からフランス系ではアンセルメ、ロンバール、フレモー、最近の演奏では世評の高いゲルギエフやブーレーズ、レヴァイン、トーマス、そしてエッシェンバッハなどがありますが、演奏会も終わったことだし、何よりも自分の気持ちの中でこれ以上この曲の細部まで聴いてコメントを付ける気力が失せてしまいました。 さて、紹介した中で印象に残った名演奏を挙げると、 ・モントゥー&サンフランシスコ(1950) ・ミュンシュ&パリ管 ・フルネ&東京都響 ライヴ ・デーヴィス&ロンドン響 ライヴ ・クレンペラー&フィルハーモニア管 数多い幻想交響曲の録音中この5つが群を抜いていました。 次点として次の4種。 ・パレー&デトロイト響 ・ミュンシュ&ボストン響(1962) ・マルケヴィッチ&ベルリンフィル ・アバド&シカゴ響 以上印象の強い順です。 あい変らず古いものが中心となってしまいましたが、最近の指揮者では、マリス・ヤンソンスの映像とチョン・ミョンフムの来日ライヴが良い演奏でした。しかし、まだ以上9つの演奏とは隔たりを感じます。 世評の高いブーレーズは個性的ですが、正直なところどこが良いのかさっぱりわかりませんでした。注目のゲルギエフも彼としては不完全燃焼気味で、これは再録音を期待したいと思います。古楽器系では今のところ特に飛びぬけた演奏はないように思います。 「幻想交響曲」を実際に演奏してみて、そしてずっと聴いてきて薄々感じてきたことですが、楽章によって曲の完成度にバラつきがあるように思いました。特に第1楽章の完成度に比べて他の楽章が弱いような気がします。 もちろん名曲中の名曲であり、楽器の用法と組み合せの革新性、素材をうまく加工する見事さは比類のないものでありますが、間奏曲のような趣きの第2楽章は別にして、旧作のモザイクのような第3、4楽章、グレゴリオ聖歌やフーガなどの古い素材や技法を使った第5楽章も異質なものを接木したかのような印象で、ベルリオーズ自身の作曲時の力の入り方に温度差があるような印象です。実際に演奏してみても第1楽章が全曲中で一番難しかったですね。 いくつかの演奏を聴いてみて、第1楽章が充実している演奏にハズレがなかったことを最後に付け加えておきます。 (2004.12.23) |