今回は、バーンスタインがニューヨークフィルを振った二つの録音を紹介します。 ・ ニューヨークフィルハーモニック (1962年4月16日 ニューヨーク マンハッタンセンター スタジオ録音) バーンスタイン44才でニューヨークフィルの音楽監督時代の再録音、以下が新旧録音の演奏時間の比較です。 1953年 @8:52 A13:33 B7:16 C11:26 合計41:10 1962年 @11:02 A11:14 B6:31 C10:59 合計39:45 新盤は、第1楽章のリピートをおこなっているにもかかわらず旧盤よりも演奏時間が短くなっています。ただ聴感上は旧盤の方が早く感じます。それだけ音楽の流れが自然となり、演奏自体が練れてきたということでしょうか。 明るく元気なパンチの利いた演奏。第1楽章経過主題はスウィング気味、第2楽章menoの扱いもブルース風にも聞こえます。 第1楽章序奏ティンパニトレモロは1発打ち、第2主題はAABB型のジムロック版使用。主部は速いテンポ、413小節からのトランペットのタッタカターンの2小節を強調。第2楽章冒頭コラールでは、ティンパニが入る直前で大きなタメ。 第3楽章が非常に早く、血が吹き出るような激しさを持ってエネルギッシュに盛り上がります。通常テンポを落とす中間部もそのままの速さ。 第4楽章は旧盤同様のテンポ設定ですが、リズムの刻みが明確であるため停滞感はありません。落ち着きも感じられる威風堂々たる出来、終結部329小節以降もテンポを落とさず重厚そのもの。 身振りの大きなバーンスタインの指揮姿が目に浮かぶようです。「ウエストサイド・ストーリー」の音楽そのもののようなエネルギッシュで活気に満ちた現代的な演奏でした。 今回聴いたのは日本コロンビアから出たOS269という国内初出LPです。後のCBS盤のような軽さはなく、艶のある心地よい再生音。 ・ ニューヨークフィルハーモニック (1958年2月1日 カーネギーホール ライヴ映像) バーンスタインの主催していた「ヤングピープルズコンサート」のライヴ映像です。 この時のテーマは「アメリカ音楽ってなに?」というテーマで、チャドウィックやマクダウェルらアメリカ音楽草創期の作曲家とともに「新世界より」が紹介されていました。 第1楽章序奏部分をオーケストラで、第2楽章の有名なテーマをバーンスタイン自身がピアノを弾いて紹介しています。この時バーンスタインが強調しているのは、インディアンや黒人霊歌をヒントにしている「新世界より」は本来のアメリカ音楽の姿ではない、というものでした。有名な「家路」のテーマをピアノで弾き、バーンスタイン自身が歌詞をつけて歌い、「まるでチェコ国歌のようだ」とも言っています。 第1楽章序奏のティンパニは62年盤と同じ1発打ちですが、テンポ運びは53年盤により近いもの、オケはコントラバス9本で木管も倍管の巨大な編成でした。 (2005.12.09) |