「新世界よりを聴く」98・・・レヴァイン
「ジェイムズ・レヴァイン(1943 - )」

アメリカのシンシナティ生まれ、最初ピアノを学び10才でシンシナティ響と共演。
ジュリアード音楽院で指揮を学んだ後、1970年までクリーヴランド管でセルの助手を務めました。1970年にフィラデルフィア管を振って指揮デビュー。1973年からメトロポリタン歌劇場の首席指揮者となり1983年から芸術監督。2004年からは小澤征爾の後任としてボストン響の音楽監督も兼ねています。

レヴァインの「新世界より」には2種の録音があります。

・1981年   シカゴ響
・1994年   ドレスデン国立歌劇場管

・ シカゴ交響楽団
(1980年6月29日 シカゴ メディナティンプル スタジオ録音)

レヴァインは1974年ごろからフィラデルフィア管やシカゴ響を振り、ブラームスやシューマンの交響曲全集、マーラーの一連の交響曲録音など、RCAへの精力的な録音活動を始めます。この録音はRCAへのデジタル録音でレヴァイン初のドヴォルザーク。

健康的で爽やか、現代的でスマートにまとめた演奏でした。ローカルな土臭さと熱狂とは無縁の純音楽的な表現。最初聴いた時にはあっさりしすぎて物足りなさを感じましたが、繰り返し聴いているうちに、自然な流れの中に明朗な気分の横溢している新感覚の名演だと思えてきました。

第1楽章序奏のティンパニは2段打ち、第2主題はBABA型のスプラフォン新版。リピート有り。第2楽章のコールアングレの主題もサラリと流し、後半の弦楽器のみの室内楽的な部分もいつのまにか終わってしまう印象です。

第4楽章冒頭物々しい開始の第4楽章は、鋭いアクセントで主題を展開、クラリネットソロ裏のヴィオラの強調といった個性も聴かせます。

世界最高性能を誇るシカゴ響の威力は見事なもので、第2楽章のクラリネット2本とオーボエが絡み合いながら歌い上げる部分のぴったりとしたフレージングと完璧なバランス、続くmenoのヴァイオリンが1本に聴こえるところなど、さりげない部分でシカゴ響のバツグンのうまさを見せつけてくれます。

ただオケの性能の誇示はあえて避けている印象です。最強のブラスセクションもパワーをかなりセーヴした節度を持った響きを聞かせていました。

・ ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
(1994年11月 ドレスデン ルカ教会 スタジオ録音)

ドイツグラモフォンへの再録音。同じコンビで90年には交響曲第8番も録音されています。シカゴ響との旧録音は、さっぱりとした現代的なフレッシュ感覚が魅力的な演奏でしたが、こちらは自由闊達な雰囲気の中にヒューマンな温かさが漂う演奏。

第1楽章序奏のティンパニは1段打ち、第2主題はBBBB型。リピートもなく、旧盤と細かな部分で大きく異なっています。
これらの特徴は指揮者ではコンヴィチュニーやイッセルシュテット、オケではウィーンフィルとチェコフィルの演奏に共通していますが、アクセントの生かし方はスプラフォン新版に近く、むしろチェコフィルの使用している譜面に最も近いような気がします。

第1楽章のフルートの柔らかな響きと経過主題の懐かしさ、大きなふくらみを持った第2楽章両端のブラスのコラールなど、随所で聴き所満載、ドレスデンの渋く古雅なオケが実に魅力的です。生き生きとした躍動感にも不足せず、第4楽章の大きな盛り上がりも聴き応えのある出来でした。

伝統の有るドレスデンのオケの特性を生かしつつ自分のペースに巻き込みレヴェイン自身の音楽を聴かせているのが見事だと思います。

今回聴いたのはユニバーサルの国内盤廉価CDで90年録音の8番とのカップリング。
4D録音の雰囲気豊かな優秀録音。
(2006.06.21)