「サー・アレクサンダー・ギブソン(1926 - 1995)」 スコットランドのマザーウェル生まれ、マルケヴィッチとケンペンに指揮を学び、25歳で指揮デビュー。BBCスコティッシュ響の副指揮者を経てサドラーズ・ウエルズオペラの音楽監督、その後スコティッシュ・ナショナル管の音楽監督。 ギブソンは晩年N響に客演したりもしましたが、活動の場はほとんど故郷スコットランドに限定されていました。 録音は比較的早い時期からありました。その多くはリーダーズ・ダイジェストなど大衆向けのセット物名曲シリーズや、メジャーレーベルの抜けたレパートリーの穴埋め程度の扱いであったと思います。その後80年代になってシャンドスレーベルなどに20世紀のスコットランドの作曲家やシベリウスの交響曲、交響詩のまとまった録音で、大きな仕事を残しています。 駅売りワゴンセールで今も見かける廉価シリーズ、ロイヤルフィルハーモニック・コレクションに残したベルリオーズ序曲集が最後の録音となりました。 世俗的な名声に背を向け一箇所に落ち着き、堅実な実の有る仕事を残した指揮者だと思います ・ ロンドンフィルハーモニー管弦楽団 (1966年ころ スタジオ録音) EMIの廉価レーベルClasicc for pleasureへの録音です。辛口でいぶし銀の大人の音楽。 第1楽章序奏ティンパニトレモロは2段打ち、第2主題はBABA型のスプラフォン版。 59小節めで主題が初めてffで演奏される直前のティンパニの急激なクレシェンド、終結部440小節めからの弦楽器の動きに木管のトリルを重ねるなど、さりげない職人技が要所で光ります。さらりとさりげなく旋律を歌わせるのも見事。 当時のロンドンフィルは、他のロンドンのオケとは異なるモソッとした厚い響きが特徴で、第2楽章の金管のコラールなどかなり太い響きです。ただ第3楽章は中間部のリズムが固く、あまりにも朴訥に感じました。必要にして充分な音楽は鳴っていますがあまりにも渋く、外面的な効果から背を向けた第4楽章とともにギブソンが大衆的な人気とは無縁だった理由が判るような気がします。 今回聴いたのは英盤LPで(SIT60029)、音は自然なステレオ。大衆向け廉価盤シリーズ特有のチープな造りのペラペラジャケットとレーベルが、当時のEMIにおけるギブソンへの扱いが感じられます。 (2005.12.15) |