「新世界よりを聴く」76・・・イギリスの指揮者たち5 アンドルー・デーヴィス
「サー・アンドルー・デーヴィス(1944 - )」

イングランド南東部アシュリッジ生まれ、キングズカレッジでオルガンを学ぶ。この時期アカデミー室内管のチェンバロ奏者としての録音もあります。
ローマの聖チェチーリア音楽院でフランコ・フェラーラに指揮を学び、グローヴスに認められロイヤル・リヴァプールフィルの研究生、1974年にアンチェルの後任としてトロント響の音楽監督。グライドボーン音楽祭の音楽監督、BBC響の首席指揮者を歴任。
2000年からシカゴ・リリックオペラの音楽監督。

夏のロンドンの風物詩プロムス・ラストナイトで、あごひげを蓄えエネルギッシュな指揮ぶりでBBC響を率いていたアンドルー・デーヴィス、録音はチェンバロ奏者時代から数多くあります。

私には70年代後半にニューフィルハーモニア管を振ったデュリュフレのレクイエムが感銘深く、最近ではapexから出ているストックホルムフィルを振ったシベリウスの管弦楽曲集が深い叙情を湛えた素晴らしい演奏でした。

ドヴォルザークは、そのデュリュフレと同じ時期にフィルハーモニア管を振った交響曲全集があります。ところがLP時代にはこの全集が国内発売された形跡はなく、96年にソニークラシカルが出した1,000円の廉価CDシリーズでようやく7,8番が発売されました。

ところが全く注目されず、たちまち廃盤。

「新世界より」は会員制のソニー・ファミリークラブの名曲全集中に、かろうじて発売されていました。

・ フィルハーモニア管弦楽団
(1979年       スタジオ録音)

ボロディンの交響曲全集などとともに、デーヴィスが大きく飛躍し始めた時期にCBSにおこなったドヴォルザーク交響曲全集録音中の一枚。現在はRCAから出ているようです。
線の細さは感じられますが、丁寧な歌いこみとオケのバランスも良い高水準の演奏でした。

第1楽章序奏ティンパニは2段打ち、第2主題はBABA型のスプラフォン版。
フルートの太い響きが印象的で、スピード感とダイナミックスの変化にも不足せず、テンポも自然な流れで聴いていて心地よいものがあります。
ただ第2楽章コラールのタメのないティンパニに聞かれるように、音楽に余裕が感じられず、今一歩音楽に踏み込めないもどかしさも感じられます。第3楽章のコーダの276小節で突然ぐっとテンポと音量を落とし大きなクレシェンドをかけるのも唐突。

きびきびと進めた都会的で洗練された爽やかさが漂う演奏ですが、演奏自体は軽量級で深い感動までには至りませんでした。

(2005.12.21)