「新世界よりを聴く」77・・・イギリスの指揮者たち6 ボストック
「ダグラス・ボストック(1955 - )」

イングランド南西部ノースウィッチ生まれ、エードリアン・ボールトとフランシス・トラヴィスに指揮を師事。
1979年にドイツのコンスタンツ市の音楽監督に就任。チェコのカルロヴィヴァリ響(カールスパート温泉管)の首席指揮者を経て、現在スイスのアールガウ響と東京佼成ウィンドオーケストラの首席指揮者。

ボストックはまだこれからという指揮者ですが、既にまとまった量の録音があります。その多くはマイナーなオケを振った大作曲家の知られざる作品や編曲ものなどの世界初録音。

「新世界より」は自らが首席指揮者であったカルロヴィヴァリ響との録音がありますが、これも作曲者の自筆譜から起こした譜面を使用する懲りようです。

・ カルロヴィヴァリ交響楽団
(1996年1月10 - 12日  カルロヴィヴァリ  スタジオ録音)

デンマークのクラシコレーベルへの録音。なぜか今は4枚組1,000円前後の超廉価盤シリーズ(660円で買ったという情報もあり)クアドロマニアの中に含まれています。そのようなことを知らなかった私は、レギュラー価格のクラシコのCDを買ってしまいました。
チェコのカルロヴィヴァリ響は1894年、カールスパート温泉管と称していた時代にA.ラヴィツキの指揮で「新世界より」のチェコ初演をおこなった由緒あるオケです。

「世界初録音魔」の異名をとるボストック、ここでも作曲者自筆ファクシミリを使用した録音を行っています。

実際に聞いてみると、他の録音との大きな譜面上の違いは感じませんでした。

第1楽章序奏のティンパニトレモロは1段打ちですが、第2主題はBBBBでこれはチェコフィルと同じ。リピート有り。主部に入ると木管楽器の一拍目に強めのアクセント。
第2楽章のコールアングレソロは早めで、menoの鄙びた牧歌的な歌が印象的でした。
カルロヴィヴァリ(カールスパート)温泉のオケはずいぶんと素朴な音で、ローカルなオケの趣。その野性的で剛直な響きに魅力も感じる人もいるかもしれませんがオケの潜在能力に限界があり、特に木管群はピッチが甘くクラリネットやフルートはしばし入りが遅れ気味でした。

第4楽章でオケが走り気味なのも気になります。
カルロヴィヴァリ響にとっては特別な曲である「新世界より」、ボストックの下、懸命に演奏している心意気は伝わりますが、オケの響きを整えるのに精一杯という印象です。第3楽章のダカーポ以降で突然テンポを早めるなど不自然さも感じられました。
(2005.12.23)