「新世界よりを聴く」80・・・日本の指揮者たち3 渡邉暁雄
「渡邉暁雄(1919 - 1990)」

日本人を父に、フィンランド人を母に東京に生まれる。日本フィル、京都市響、東京都響、広島響の音楽監督を歴任。特に日本フィルとは創設時から深い関りがあり、日本フィルを振った録音がかなりあります。今秋、日本フィル創立50周年記念事業としてCD25枚のセットが出るようです。シベリウスのスペシャリストとしても名高く、日本フィルとはステレオによる世界初の交響曲全集を含め2種の全集を残しています。

「新世界より」には以下の4種類の録音があります。
・日本フィル   1961年     スタジオ録音
・日本フィル   1965年     スタジオ録音(第2楽章のみ)
・日本フィル   1982年     スタジオ録音
他に在京のオーケストラやフリー奏者を集め3回ほど行われた「300人のオーケストラによるコンサート」の80年代ライヴが渡邉暁雄の指揮だった記憶がありますが、今回現物を確認することができませんでした。

・ 日本フィルハーモニー管弦楽団
(1961年11月3,5日  世田谷区民会館 スタジオ録音)

かつて文化放送から放送されていた東急ゴールデンコンサートの100回放送を記念して制作されたLP、一般には流通しなかった非売品です。
シャープで小気味良く、それでいて表情の豊かさにも不足しない爽やかな演奏でした。

第1楽章序奏ティンパニは2段打ち。第2主題はAABB型のジムロック版使用、主部以降はカチリとした硬めの音色で進行、しなやかで若々しいテンポ運びが心地よく感じられ、清楚でしみじみとした第2楽章は気品も漂います。ただし後半二つの楽章はいささか平凡、特に第4楽章は正確で丁寧な音楽作りで上品な趣ですが、ここは多少土俗的なアクの強さも欲しいところです。

第1楽章の60小節目あたりからオケが多少走り気味であったり、第3楽章始めのティンパニに正確さを欠く部分もありますが、オケは概ね手堅いアンサンブルを聴かせていました。

第3楽章では256小節目でフルートにトランペットを重ねていました。
この録音は文化放送のスタッフによりおこなわれ、マスターテープはステレオ収録ですが、LPはモノラルです。ジュピターレコード製で残響少なめの厚みに欠ける硬い音。
このLPには、モーツァルトの「レ・プティリアン」からのパントマイムがカップリングされていますが、同じ会場の録音なのに、こちらはふくらみのある柔らかな音なので「新世界より」のマイクセッティングに問題があったようです。
(2006.01.08)