「マリス・ヤンソンス(1942 - )」 ラトヴィアのリガ生まれ、父はレニングラードフィルの指揮者だったアルヴィド・ヤンソンス。レニングラードとウィーンで学び、1971年カラヤン指揮者コンクール2位。 1973年からムラヴィンスキーの助手としてレニングラードフィルの副指揮者。 オスロフィル 首席指揮者(1979 - 2000) ピッツバーグ響 音楽監督 (1997 - 2003) バイエルン放送響 首席指揮者(2003 - ) ロイヤルコンセルトヘボウ管常任指揮者(2004 - ) マリス・ヤンソンスの新世界は、以下の4種類があります。 ・1988年 オスロフィル スタジオ録音 ・1998年 ウィーンフィル ライヴ録音(未発売) ・2003年 ロイヤルコンセルトヘボウ管 ライヴ録音 ・2004年 バイエルン放送響 ライヴ録音 海賊盤 ・ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団 (2003年6月 アムステルダム コンセルトヘボウ ライヴ録音) ロイヤルコンセルトヘボウ管自主制作のSACDハイブリッド盤。 名門コンセルトヘボウ管の実力を十二分に引き出した生命力溢れる名演。テンポの緩急の落差が大きい個性的な演奏でした。 スピーディな音楽の流れの中に、オケがヤンソンスの解釈に大きな共感を持ちながら敏感に反応しているのが判ります。 第1楽章序奏のティンパニは2段打ち、第2主題はBBBB型。 第2楽章のコールアングレがロマンティックでしみじみとした歌で聞かせ、終盤の室内楽風の部分での絶妙な間の取り方も秀逸。 第3楽章では、8小節目の3,4拍めから連なる次の小節の1拍目を微妙に長めに取る部分など、微細な部分にまで実に細かな神経が払われています。 中間部で舞曲風の部分に導かれる小節も絶妙のタイミングで減速していきます。Da Capo後は僅かにテンポを速めていました。オケの滑らかなチェロの響きも印象的。微妙なタメを作りながらコーダへ突入し、終結部の鮮やかなティンパニのクレシェンドも名人の域です。 第4楽章は、冒頭部分が少し重めに開始、続く第1主題では弦楽器のレガート気味のたっぷりとした歌で聴かせますが、このあまりにもロマンティックな歌わせ方は多少好き嫌いが分かれそうです。40小節から次第に加速。熱い生命力が漲る響きがホールに広がり、大きなクライマックスを築いていました。 チェコの指揮者たちに代表される土俗的でローカルな解釈や、トスカニーニの影響を受けたインテンポタイプの演奏とは全く次元の異なる新時代の「新世界より」でした。 個性的な表現が次々と飛び出しますが、恣意的にならず安定した完成度の高い解釈で、極めて大きな説得力をもって聴き手に迫ってくるのが圧巻。 ところがこれほどの名演にもかかわらず録音が良くないのが残念です。まるで風呂場で聴くような過度に残響の多い録音で、細部も不明瞭。 (2006.07.06) |