「キリル・コンドラシン(1914 - 1981)」 モスクワ生まれモスクワ育ち、両親はボリショイ劇場の楽団員。モスクワ音楽院でハイキンに指揮を師事し在学中に指揮デビュー。ボリショイ劇場の指揮者の後、1960年にモスクワフィルの常任指揮者となりこのオケの水準を飛躍的に上げています。 78年には西側に亡命、アムステルダム・コンセルトヘボウ管の首席客演指揮者となりました。コンドラシンの音楽は、知的でいて強固な構成力に裏打ちされたもので、ロシア音楽に限らずマーラーやブラームスでも名演を聴かせました。81年テンシュテットの代役として北ドイツ放送響とマーラーの「巨人」を演奏したその晩に急逝。バイエルン放送響音楽監督就任直前の突然の死でした。 ・ ウィーンフィルハーモニー管弦楽団 (1979年 9月17 - 19日) ウィーン ソフェンザール スタジオ録音) デッカへのスタジオ録音。ウィーンフィルを豪快にドライヴした野性味溢れる演奏ですが、ロシア色丸出しではなく都会的な洗練さも漂います。 第1楽章序奏22小節目のティンパニは1発打ち、ティンパニの硬いカリッとした響きが印象的です。主部は速いテンポで突き進み、フルートによる経過主題は大きく揺れ動き、第2主題はAABB型でリピート有り。 第2楽章コラールのティンパニは、同じウィーンフィルを振った小澤征爾盤と同じpに改変、ウィーンフィルの譜面がそうなっているのでしょうか。 26小節からののヴァイオリンの繊細な表情はなかなか聴かせます。最後の弦楽器のみの室内楽風の部分は多くの演奏がテンポを落とす中、素っ気無いほどの早いテンポで通り過ぎていました。 第3楽章冒頭のセカンドヴァイオリン、121−2小節の1,2hrの8分音符強調など聴きなれないパートが聞こえ、演奏としてはゴツゴツした無骨な印象。235小節のフルートにトランペットを重ね、276小節ではff指定をpから開始してクレシェンド付加。 第4楽章の55小節ファーストヴァイオリン2拍めのfz、ホルンのアクセント強調。 91小節からのトランペットはウィーンフィル特有のソーレの型、ここでのトランペットをタァーンと音を抜き気味。186小節からテンポアップし猛烈に盛り上げます。207小節のティンパニにデクレシェンド付加。 老舗のウィーンフィルを自分の個性で引っ張ったコンドラシンの名演ですが、崖っぷちに追い詰められたようなピリピリとした緊迫感漂うソ連時代のモスクワフィルとの演奏や、アルゲリッチと共演したバイエルン放送響とのチャイコフスキーのピアノコンチェルトの凄まじい演奏と比べると、幾分ウィーンフィルに譲ったような中途半端さを感じました。 (2006.01.16) |