「ズービン・メータ(1936 - )」 インドのボンベイ生まれ、父はボンベイ交響楽団の創設者といった恵まれた音楽環境で育ちウィーンでスワロフスキーに指揮を学ぶ。モントリオール響、ロサンゼルスフィル、ニューヨークフィルの音楽監督を経て1998年からバイエルン州立歌劇場音楽総監督。 ・ ロサンゼルスフィルハーモニック (1975 5月 ロサンゼルス ロイスホール スタジオ録音) メータが最も輝いていたロスフィル音楽監督時代のデッカへの録音。 ネアカで爽快、パンチの効いたストレートな演奏ですが、テンポの揺れやルバートをかけた古風な表現も聴かれます。 第1楽章のティンパニは2段打ち、第2主題はAABBのジムロック版使用。序奏から速いテンポで進行、張りのあるティンパニの響きが小気味良く決まっていますが、最後の終結部でオケを煽りながら急速に速めるのは唐突で不自然。音楽が軽い印象でもう少し余韻が欲しいと思います。 第2楽章では112小節めの弦楽器による室内楽風の部分から弦楽器の全合奏となる箇所で大きなルバートをかけ、最後の弦楽器の上昇音型をポルタメント気味にしてました。 トランペットがファンファーレ風に盛大に鳴り響く第4楽章90小節めでは、直前でテンポを落してトランペットを抑え弦楽器のメロディを強調。 さらに終盤大詰めのホルンソリの後に主題が全ての楽器によって鳴り渡る305小節も、管楽器を抑えて弦楽器をたっぷり歌わせ、続くフォルティシモも各楽器が鮮明に響くバランスで聴かせます。ただし終結部でテンポを速めオケを煽るのはいかにも人工的。 意欲が空回りして若気の至りのような部分もありますが、オケを豊麗に鳴らす手腕は確かなもの。強奏部分で全体の響きをあえて抑制気味にし個々の楽器の個性を鮮明に浮かび上がらせることに神経を注いでいる印象です。音色の変化に独自の工夫が聴かれる面白い演奏だと思いました。 今回聴いたのは10年ほど前に出た国内盤CDで、アナログ最盛期の艶のある美しい響きが聴かれます。 ただし第2楽章のコールアングレソロ再現前のフォルティシモ部分で、盛大に鳴るはずのティンパニの音が聴こえていませんでした。編集ミスでしょうか。 (2006.02.26) |