「新世界より」を聴き続けて一年余り、昨年の6月から始めた「新世界より」の聴き比べも今回で100回となりました。 「新世界より」は自分がクラシック音楽に親しみ始めた頃に接した名曲で、初めて購入したポケットスコアもこの曲でした。長年のお付き合いの中で、曲の隅々まで知っているという自負があったのですが、複数の版のスコアを見ながら古今の名指揮者たちの録音を集中して聴いているうちに新たな発見が次々と出てくるのに大きな戸惑いを覚えた、というのが正直なところです。 出回っている録音量は膨大なもので、未だに全貌は見えていません。ただ、今回紹介した130種類余りの演奏でおそらく全体の3分の一近く、そして代表的な演奏はほぼ紹介できたと思います。 以下に印象に残っている演奏をいくつかあげておきます。( )は録音年 以下の13種類は、数ある録音の中で指揮者とオーケストラの個性が最上の形で結実した傑出した演奏。 ◎ターリヒ &チェコフィル(1949) トスカニーニ &NBC響(53) ガリエラ &フィルハーモニア管(53) フリッチャイ &ベルリンフィル(59) セル &クリーヴランド管(59) パレー &デトロイト響(60) ケルテス &ウィーンフィル(61) アンチェル &チェコフィル(61) スメターチェク&プラハ放送響(74) ベーム? &ウィーンフィル(78 ライヴ)疑問盤 スイトナー &ベルリン国立歌劇場管(78) マーク &スイス・イタリア語放送管(96 映像) C・デーヴィス&ロンドン響(02) 次の12種類は、「新世界より」のスタンダードな演奏として、存在価値を充分に誇りうる演奏。 ライナー&シカゴ響(59) ドラティ&ロイヤル・コンセルトヘボウ管(59) ケンペ&ロイヤルフィル(62) カラヤン&ベルリンフィル(66映像) ケルテス&ロンドン響(66) イッセルシュテット&北ドイツ放送響(69ライヴ) クーベリック&バイエルン放送響(80年ライヴMETEOR盤) ノイマン&チェコフィル(89) 小澤&ウィーンフィル(91) ノイマン&チェコフィル(93ライヴ) レヴァイン&ドレスデン国立歌劇場管(94) アバド&ベルリンフィル(99) 次の5種類はユニークな解釈ながら説得力が非常に高く、忘れ難い演奏。 ・ストコフスキー&フィラデルフィア管(27) フリッチャイ&RIAS響(55) アンチェル&チェコフィル(58 ライヴ) シルヴェストリ&フランス国立放送管(59) ホーレンシュタイン&ロイヤルフィル(62) 一年を越える連載となってしまったので、最初の頃聴いた演奏の中には記憶が薄れているものもあり、連載の最初の部分と最後では曲への接し方が劇的に変わってしまいました。 出版時の混乱を今に後を引いている版の問題、伝統あるオーケストラに伝承されているドヴォルザーク自身や錚々たる名指揮者たちの解釈の痕跡、オーケストラ奏者の立場からの慣習的な改変、そして全く新しい視点からアプローチを試みている21世紀の演奏の数々など、まだまだ興味は尽きません。 アルノンクールやホルダ、ワルターのライヴなど、紹介できなかった面白い演奏もまだまだ多くありますが、連載100回目となった今回で連載は終了とします。 (2006.08.13) |