曲の楽器編成とグレゴリオ聖歌の使用について
デュリュフレのレクイエムには3つの版があり、大編成のオーケストラ版が最初に作曲され、その後オルガン伴奏版、小編成オーケストラ版が作曲されています。


<第1版:1947年>

ほぼ3管編成ですが木管楽器のうちファゴットは2本、オーボエ2本のうち1本はコールアングレ持ち替えでコールアングレ2本を同時に吹かせている箇所もあります。

金管楽器はトランペット3、ホルン4、トロンボーン3、チューバ1
弦楽器5部
打楽器、チェレスタ、ハープ、オルガン

<第2版:1948年>
   オルガン、チェロソロ

<第3版:1961年>
   トランペット3、弦楽器5部、ハープ、オルガン、
   

このレクイエムの大きな特徴としてグレゴリオ聖歌からの引用があります。

グレゴリオ聖歌でも特に有名な「怒りの日」の旋律を引用している作曲家は数多くありますが、デュリュフレの場合は「怒りの日」の旋律のみならず曲の大部分の旋律をほぼグレゴリオ聖歌をそのまま使用しています。

極論かもしれませんが、デュリュフレのレクイエムは、グレゴリオ聖歌のレクイエムをドビュッシー、ラヴェルらフランスの作曲家たちの影響を受けた近代的なスタイルで編曲した作品。

とも言えるかもしれません。



以下は曲ごとのグレゴリオ聖歌の引用と特徴的な部分です。

「第1曲 イントロイトウス」  

オーケストラの序奏に続き最初に男声によって歌われるRequiem aternam・・・・
の旋律はグレゴリオ聖歌のイントロイトウス旋律そのまま。
「ファソファファーファソララソファーソソファ」はヒポリディア旋法。

「第2曲 キリエ」    
 
こちらもヒポリディア旋法のグレゴリオ聖歌そのまま ファソラシ♭ララソ
カノン風に歌われるのが特徴的。

「第3曲 ドミノ・イエズ・クリステ」

冒頭のチェロ、コントラバスの旋律はヒポドリア旋法。次のアルトの合唱で変形されて登場します。

「第4曲 サンクトウス」

女声合唱のシシラシラの単純な形の繰り返し、シンコペーションが印象的
fffが出る唯一の楽章。

「第5曲 ピエイエズ」

こちらはグレゴリオ聖歌からの引用はないようです。

「第6曲 アニュスディ」

ファとシの間で揺れ動くグレゴリオ聖歌のアニュスディの旋律そのまま。

「第7曲  ルクス・アテルナ・・・・コムニオ」

ファゴットソロからソプラノ合唱へ。ヒポミクソデイリア旋法

「第8曲 リベラメ」

中間部の怒りの日の歌詞部分で怒りの日の旋律

「第9曲  インパラディズム」

ミクソリディア旋法のグレゴリオ聖歌の旋律をそのまま使用。



最後にデュリュフレが自身のレクイエムについて語った言葉を紹介しておきます。

要約すると。

「形式はレクイエムミサのテキストによる。だが必ずしも完全に一致するものではない。」
「常にグレゴリオ聖歌独自のスタイルを取り入れることを意識した。
ベネディクトゥスのように近代的なフレーズに改変した部分もある。」

特にフルオーケストラ版については、

「テキストが最も重要であり、それゆえにオーケストラの介入は接続的あるいはエピソード的な役割にとどめた。」

「オルガンはあまりにも人間的なオーケストラの響きを忘れ去るために使用。
オルガンは信仰と希望の融和の象徴である。」


(2016.12.30)