今回は、ウィーンフィルとのベートーヴェン交響曲全集で知られる、 ハンス・シュミット=イッセルシュテットの60年代のスタジオ録音。 ハンス・シュミット=イッセルシュテット(1900 - 1973)」 ベルリン生まれ、ウッパタール歌劇場のヴァイオリン奏者から練習指揮者となり、ロストック、ダルムシュタットの各歌劇場の指揮者を歴任。その後30代でハンブルク国立歌劇場の首席指揮者となり、1942年にはベルリン・ドイツ歌劇場の総監督に就任しています。1945年にはハンブルクの北ドイツ放送交響楽団の創設に深くかかわり、戦争でドイツ各地に散り散りになっていた優秀な演奏家たちを集め、このオーケストラを短期間で世界的なオーケストラに育てました。 ブラームスは意外に少なく、ハンブルクの放送局に残っていた放送用ライヴをまとめた交響曲全集が追悼盤のような形で西ドイツのアルティアから発売されていました。この録音は後にフィリップスレーベルから1981年に4枚組LPの形で発売されています。現在はSCRIBENDUMとEMIからCD化されています。 第4番は北ドイツ放送響とのスタジオ録音もあり、私は未確認ですがフィラデルフィア管との録音もLPで出ていたようです。 ・北ドイツ放送交響楽団 (1960年代 スタジオ録音) VOXへのスタジオ録音。イッセルシュテットと北ドイツ放送響は1963年のアメリカ楽旅でブラームスの演奏で絶賛を博しています。この時に録音されたものかもしれません。 譜面に書かれた各パーツを有機的に積み上げた職人気質の演奏。ブラームスの生地ハンブルクのオケも充実の響きを聞かせ、この曲のスタンダードと言ってよい演奏だと思います。 肩の力の抜けたごく自然な滑り出しの第一楽章冒頭に続き、弦楽器の正確な刻みを聞かせながら一定のテンポ感で流していく手馴れた演奏です。906小節のsempre fをpで始め、しだいにクレシェンドしながら後半で徐々に加速するなど、長年の経験に培われた職人的な手際のよさが光ります。 第二楽章20小節から24小節にかけての木管の旋律を支えるピチカートの自然な移ろい、第2主題のチェロの柔らかな響き、第三楽章の99小節めffのずしりとした充実した響きも印象的。 第四楽章では遅いテンポで大きな広がりを持った冒頭のコラールが素晴らしく、フルートソロに導入される部分の第10変奏で木管楽器群が次第にデクレシェンドしていく中に弦楽器がさりげないピアニシモで入ってくるところなど実にうまいものです。続くフルートソロも大変な名人芸。 最初はこれといった特徴も見出せず物足りなさも感じましたが、聴き終わった後に立派な音楽を聴いたという充実感を感じさせる不思議な演奏です。おそらくドイツで日常的に聴かれるブラームスはこのような演奏だと思います。 手持ちは日本コロンビアから70年代に出ていたLP。VOXから送られてきたテープの状態がよくなかったようで、響きの鮮度はいまひとつでした。 (2008.01.14) |