マックス・フィードラー(1859 - 1939) ドイツのツヴィッカウ生まれ、ハンブルクフィルの指揮者の後、ロンドン響、ボストン響の首席指揮者、エッセン市の音楽総監督を歴任。フィードラーはハンブルク時代にブラームスと親交があったと言われています。録音も交響曲第2番、第4番、大学祝典序曲、ピアノ協奏曲第2番の録音を残しました。なお交響曲第3番のプライベート録音も存在します。 ・ベルリン国立歌劇場管弦楽団 (1930年 ベルリン スタジオ録音) 独ポリドールから発売されたSP6枚組からの復刻CD。ブラームスの生地、北ドイツ・ハンブルクの曇り空を思わせるような暗さと重厚さが全編を支配。雄渾で骨太な演奏でした。 一音一音噛み締めるような第一楽章冒頭、第一主題後半の11小節目からスルリスルリと次第に加速。53小節と321小節でホルンを木管に重ねるのはアーベントロート盤と同じですが、冒頭主題でのポルタメントはなし。第二主題導入部となる76小節めで微妙にテンポを落とします。 そして再現部が始まる394小節めの突然の大ブレーキ。ここで一挙に火が付いたかのような猛烈なダッシュが始まります。終結部に向かってぐんぐんと加速、音量も増幅、狂気に満ちた熱狂の中、リタルダンドをかけつつ猛烈なティンパニの乱打のうちに終結を迎えます。 3, 4番ホルンがゆっくり一音一音を切る第二楽章では30小節めのトランペットの入りがプスーっと不発。通常ならば取り直しをするところです。続くチェロの明確なピチカートに乗って旋律が展開。72小節目のホルンの冒頭回帰部分でテンポ落とし、序奏をつけるかのように75小節からの激しく加速。通常テンポを落としがちな84小節はインテンポで進行。 重戦車が突っ走るかのような怒涛の第三楽章は、愉悦感に満ちたヴァイオリンの第2主題と後半のエネルギーの奔流の対比が聞き物。139小節め直前で聴かせる大胆なルフトパウゼは、中間部168小節めのホルンソロ前1拍目の休符が短いのとあわせて復刻の際の繋ぎ目がうまくいっていない可能性があります。他の復刻盤と比較してみたいものです。 そして巨大な第4楽章は、第1変奏のピチカートのずれやトランペットの音が貧弱であるなどの欠点はありますが、バスを強調し終始どっしりとした不動のテンポが支配。 金釘流の第4変奏、1拍めをことさら強調する第6変奏が印象的。 94小節のコントラバスにはホルンの低音を重ねているようです。第21変奏からしだいにテンポを落とし第30変奏で多少テンポを上げるものの遅いテンポは終結のpiù allegroでも変わらず。コーダでも297小節のffで大きくタメを造り、まるでブルックナーの交響曲第8番のフィナーレの終止のように曲を閉じます。 巨大な造形とモノモノしい解釈。この時代でしか通用しない独特の解釈ですが、有無を言わさない説得力は感じます。ただ、なりふり構わず猪突猛進の小回りの利かなさが鈍重さを感じさせるのも事実。 今回聴いたのはアーベントロート盤と同じビダルフの復刻CDです。フィードラーの残したブラームス録音を全て収録していることで貴重ですが、録音状態はよくありません。 (2007.03.15) |