フェリックス・フォン・ワインガルトナー(1863 - 1942) クロアチアのザーラ生まれ、リストとシューマンの弟子であるライネッケの教えを受けています。ベルリン宮廷歌劇場首席指揮者、ウィーン宮廷歌劇場の総監督、ウィーンフィルの常任指揮者を歴任。1937年に来日し新交響楽団(現N響)を指揮。ワインガルトナーはブラームスの交響曲を全曲録音しており、曲によっては複数の録音があります。 ・ロンドン交響楽団 (1938年2月14日 ロンドン、アビィーロード・スタジオ スタジオ録音) ブラームスが高く評価していたワインガルトナーのブラームス。 この演奏は、明るく淡い音色、スリムで端正、竹細工のようなしなやかさが魅力の演奏でした。 第一楽章序奏はあっさり開始、少しずつテンポを速め、健康的で流麗な流れる演奏。 第二楽章も速いテンポでスイスイ進むが、雄弁なチェロのピチカートに載りながら自然に流れるヴァイオリンの第2主題が印象的。各所で見せるテンポの微妙な揺れが深いニュアンスを感じさせます。 品格に満ちた第三楽章は比較的遅めのテンポ、ただしティンパニがほとんど聞こえず力強さに欠け、特に大きな音楽の転換部分である199小節め(Tempo I)のティンパニがほとんど聞こえてこないのは致命的。52小節からのチャーミングな歌わせ方は良いと思います。 インテンポで進めた第4楽章はすっきり推進力のある音楽造りで聴かせます。ただしオケの無個性の薄い響きが興を削ぎます。これは復刻技術に問題があるのかもしれません。 59小節めから微妙な減速。114小節からのブラスのコラールでは短くフレーズを切っているのでこの部分で音楽の流れが一瞬止まってしまいました。終結部300小節目の絶妙な落とし具合は名人芸の域。 端正で譜面に忠実なワインガルトナー、恣意的なほどテンポを揺らし巨大な造形のフィードラー、いったいどちらがブラームスの真の意図を汲み取っているのでしょうか? ブラームスの3番の聴き比べでも感じたのですが、ブラームスと親交のあったマックス・フィードラーとワインガルトナーの二人の演奏の演奏スタイルがあまりに異なるのに困惑してしまいました。 今回聴いたのはアメリカのAllegroというレーベルから出ているブラームス交響曲全集の2枚組CDです。当然SPからの板起こしですが、ノイズのカットが過剰で全体に薄いのっぺりとした響きです。演奏の熱気や演奏者の息づかいといった音楽の重要な旨味まで飛んで行ってしまったようです。 何度も繰り返し聴いたのですが、本来はもっと良い演奏ではないかという思いが常に頭から消えませんでした。 (2007.03.27) |